令和4年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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4継続雇用・職場適応援助者(ジョブコーチ)第2節 視覚障害者129のが当たり前の状況です。これらのソフトの中でのテキスト情報の取り扱いは問題なく、全盲者単独での業務遂行は可能ですが、写真や図等の画像については、全盲者では扱うことができないので、周りの人の手助けが必要になります。昨今では、マイクロソフト社のAccess等のデータベースソフトにより小規模なデータベースを構築するような業務や、マクロ言語の記述によりExcelの自動処理を行う業務なども事務的職種の一部となっている場合もあります。事務的職種においてもある程度PC操作のスキルが要求されるようになってきています。全盲者の電話での顧客対応では、PCを操作しながら顧客と会話する必要があります。その際、スクリーンリーダーによる音声読み上げでは、電話と同じ聴覚情報を用いることになるので、通話とPC操作を同時に行うのが難しくなります。その場合にはPC操作の際に点字ディスプレイを使うことで、通話とPC操作を同時に行うことができます。③ ヘルスキーパー理療(あんま・マッサージ・指圧、鍼、灸)は三視覚障害者の多くは中途障害者のため、その対策が欠かせません。その場合、まず大事になるのが現在企業に雇用されていて、中途で障害を負った中途視覚障害者の雇用の継続を図ることです。中途視覚障害者の雇用継続を考える場合には、様々なことを検討しなければなりません。これまでの業務経験や技能・技術を生かしてどのような職務を遂行できるか、そのために必要な支援機器は何か、歩行や点字の訓練の必要性などを検討する必要があります。本人や企業はこのようなことに関する知識が少ない場合が多いですから、専門家を交えた検討がなされてきました。最近では、このような専門家として職場適応援助者(ジョブコーチ)が注目されています。職場適応援助者(ジョブコーチ)は、障害者の職場適応が円滑に行われることを目的として、職場に直接出向き、本人や会社に対して作業遂行や職場内のコミュニケーションの向上支援、職務内容の設定に関する助言を行う人です。ヘルスキーパーや事務的職種の新規雇用における療ともいわれ、わが国の視覚障害者の伝統的な職業です。また、就業する視覚障害者の中で三療に従事する人が最も多いです。この長年にわたって蓄積されてきた知識と技術を活用して、企業の従業員の疲労の回復、心身のバランス調整、健康の増進にあたるのがヘルスキーパー(企業内理療師)です。厚生労働省、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構をはじめ関係団体の努力によって、ヘルスキーパーを導入する企業が増えています。ヘルスキーパーとして雇用される人は、特別支援学校(盲学校)や専門養成施設での教育を受け、国家試験合格後、病院や治療院で実務経験を積んだベテランも少なくありません。設備は大がかりなものは必要なく、医療用ベッドと簡単な治療機器をそろえれば十分といわれています。ヘルスキーパーの職場でもIT化が進み、多くの職場で予約管理や業務日誌等の予定管理・文書処理をPCで処理するようになってきています。PCの操作スキルも要求されますが、多くの場合は基本的な操作ができれば十分な状況です。職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援も行われていますが、雇用継続や復職のための職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援も行われています。視覚障害そのものや、訓練・支援の制度に疎い中途視覚障害者とその企業にとって、このような専門家の支援を受けられることは心強いです。実際の支援の例は次のようになります。現状把握と復帰に向けた計画策定の助言、歩行訓練等の諸手続きの支援、勤務に向けた諸手続きの支援、復帰後の課題点の把握とそれへの対応が、時系列で示した支援の例になります。職場定着に向けて障害特性を踏まえた雇用管理をどのようにしていくべきか、業務内容の設定をどのようにしたらよいかというように、中途視覚障害者本人のみならず企業側もいろいろと悩みを持つ場合が少なくありません。このような問題解決のために専門家が職場に入っていき、系統的な就労支援をおこなうことが重要になります。今後、この職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援の進展と拡充が期待されます。

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