令和4年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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138言え、聴覚障害者同士が固まりやすく、聞こえる社員との交流をもちにくいといわれています。一方、分散方式では、聴覚障害者が孤立しやすく、情報提供の際も非効率であるといったことが一般的にはいわれています。しかしながら、同じ聴覚障害者だからうまくいくかというとそうとは限らず最終的には本人の適性や能力に応じて配置することが基本であり、いずれの方式であれ、情報提供やコミュニケーションに配慮した職場が求められます。聴覚障害者の雇用をめぐっては、職場への定着の問題がしばしば指摘されてきました。以下の表に示すようなことを根拠に職場の人間関係が難しいといった理由があげられますが、聴覚障害者個人の適応力の問題というより、職場への適応上の問題に直面したとき、十分に相談する機会や場がなく、結局は退職せざるを得なかった聴覚障害者も多かったものと思われます。かといって、聴覚障害があるから定着に問題がある聴覚障害者の退職状況の特徴表 障害の種類別、常用雇用身体障害者の前職退職の理由のうち個人的理由の内訳(複数回答)障害のため通勤が困難賃金・労働条件仕事の内容会社の配慮不十分職場の雰囲気・人間関係家庭の事情(資料出所)厚生労働省「平成25年度障害者雇用実態調査結果報告書」より以下、聴覚障害者の職場定着やキャリア・アップに必要な職場における情報保障の方法を見ていくことにします。職場全体の情報や、仕事を進めるうえで必要な情報を提供していく方法がいくつかあります。職場における朝礼や会議では、部分的には理解できても、議論が白熱してくると話し手が変わるのでついていけないと嘆く聴覚障害者も少なくありません。以下、職場におけるいろいろな情報提供面における聴覚障害者に配慮した伝達方法を紹介します。① 手話通訳手話を使用する聴覚障害者については、手話通訳を全  体16.6 9.732.024.820.529.419.9と短絡的にとらえるのではなく、些細なコミュニケーション不足が職場の人間関係に影響を与えて、結果的に離職してしまうようなことを避けることが基本になります。自分の担当している仕事が職場や会社全体の中でどのような位置にあるのか、将来、具体的にどのような技能やマネジメント能力をつけていけば、昇進や昇格の可能性があるのか、展望のもてる職場であることが必要です。職場においてキャリア・アップをめざすことのできる聴覚障害者も少なくありません。コミュニケーションや情報の保障に配慮した教育・訓練の機会があれば、技能の向上や高いマネジメント能力の獲得は十分に可能です。部下を管理するうえでコミュニケーション能力が必要だから聴覚障害者には管理職は難しいとか、会議での発言が困難だからといった理由でキャリア・アップの可能性を閉ざしているのでは、企業にとって大きな損失です。また、それは聴覚障害者の働く意欲を奪うことにもなります。視覚障害聴覚言語障害23.6 9.723.626.416.725.020.8 3.1 7.835.630.822.435.623.2配置するのが効果的です。議論の場面などでも臨機応変に対応が可能です。職員研修や定例の会議などについては手話通訳の配置が特に効果的です。また、聴覚障害者本人の気持ちや考えを正確に理解するために手話通訳は最も適切な方法といえます。手話通訳については、事業所のある地域の手話通訳派遣事務所や聴覚障害者の団体等に問い合わせるとよいでしょう。また、障害者総合支援法に基づく意思疎通支援事業により、市町村での手話通訳者の派遣もさらに充実することが期待されています。もちろん、手話通訳を配置しても、予め資料を聴覚障害者に渡しておいたり視覚的な資料の提示方法を併用すると理解の肢体不自由20.0 9.330.621.918.828.420.2(単位:%)内部障害22.912.229.823.722.526.315.6⑶ 職場定着のための配慮

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