令和4年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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7小腸機能障害第4節 内部障害者147⑵ 腸管ストマを必要とする代表的疾患① 大 腸 癌海外に比較して日本では少なかったのですが、食事の欧米化に伴い確実にその数は増加しています。日本人の場合、大腸癌全体の60~70%が、S状結腸と直腸に発生しています。早期の大腸癌は無症状ですが、進行癌では、血便、便通異常が出現します。直腸癌が多いので、指診といわれる肛門からの直腸内部の触診が重要です。進行癌では手術療法が中心となりますが、早期のポリープ型癌では、内視鏡的治療も可能です。② 腸閉塞(イレウス)小腸や大腸において、腸管の内腔の通過が阻止された状態をいい、嘔吐、腹痛、便秘、排ガス停止などの症状が出ます。腸閉塞は機械的イレウスと機能的イレウスに大別されます。機械的イレウスは、腸管の癒着による屈曲や癌による狭窄などで、多くの場合は腸管蠕動(ぜんどう)の亢進を認めます。機能的イレウスは汎発性腹膜炎などに伴い生じるまひ性イレウスが代表的で、この場合は腸管蠕動は減弱~停止します。③ クローン病主として若い成人にみられる原因不明の疾患で、消化管に線維化と潰瘍形成を伴う肉芽性炎症を起こします。腹痛、全身倦怠、下痢、下血が多い症状です。病巣が不連続で潰瘍が縦走する形態をとることが特徴で、しばしば病変部で狭窄を起こします。内科的治療にしばしば抵抗性があり、狭窄、閉塞を起こした場合は切除手術が必要になることがあります。④ 潰瘍性大腸炎30歳以下の成人に多いのですが、小児や50歳以上の人にもみられる原因不明の炎症性疾患です。びら 先天的原因や後天的原因によって小腸の切除を要すると、通常の経口による栄養摂取のみでは栄養の維持が困難になる場合があり、障害認定の対象となっています。該当すれば、1級(栄養所要量の60%以上を常時中心静脈栄養法で行う必要のあるもの)、3級(栄養所要量の30%以上を常時中心静脈栄養法で行う必要のあるもの)、4級(永続的に小腸機能の著しい低下があり、随時中心静脈栄養法又は経管栄養法を行う必⑶ 雇用上の注意⑴ 代表的原因疾患ん、潰瘍を形成し、血性下痢を主徴とし、粘血便、腹痛、血便がよくみられる症状です。基本的に、直腸から病変は始まり、連続的に上部に広がります。腸管壁の浅い部分(粘膜)の炎症で、分泌腺内の膿瘍(腺窩膿瘍)が形成され、腸管の短縮、壁の硬化が起こります。難治性の場合は、切除手術が必要になることがあります。⑤ 腸 結 核肺結核に伴って起こることが多く、痰の嚥下とともに腸に到達して、病変を生じると考えられています。粘膜下のリンパ組織の分布に沿って潰瘍が形成されることから、小腸では輪状潰瘍を認めることが多く、大腸では分布、形態ともに不規則といわれます。回盲部、回腸に好発します。病巣部の生検検査、生検材料・痰・胃液・便などの培養による結核菌の証明が診断上重要です。① 術後の体力の回復状況や、他の合併症の有無などを十分に配慮した勤務時間・内容の設定、出勤時間の決定などが必要であり、この際に主治医の意見聴取も重要です。② 病院から退院し障害のない人の中で生活するようになったとたん、とかく障害のない人と比較して自らの悲運を嘆き、周囲を気にして人との付き合いに消極的になり、しだいに孤独感、疎外感を増して家族や社会との断絶を招くこともあります。職場における上司、同僚の障害についての理解と協力が重要です。③ 多くの方は原疾患の経過観察やストマ管理のために、定期的な医療機関の受診を要します。④ ストマ管理を要する方には、トイレ等にストマ用具を置ける簡単な処置台の準備が必要です。要のあるもの)に認定されます。小腸大量切除の場合は手術時に、それ以外の小腸機能障害の場合は6ヶ月の観察期間を経て認定されます。前項(ぼうこう又は直腸の機能障害)で述べた腸疾患のほかに、下記のようなものがあります。

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