令和4年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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182程度が大きくなった場合では、障害者手帳制度の対象にもなりますが、ステロイド剤等の服薬や自己管理によって症状を抑えている人の多くは障害者手帳の対象ではありません。 重労働はもちろん、運搬等の中程度の肉体労働も、筋肉痛や関節痛が起きやすいため、膠原病のある人たちには苦痛となり得ます。ウ 重症筋無力症 神経と筋の間の伝達の障害により、普通よりも筋肉が疲労しやすく休憩をとると回復するという特徴の病気です。症状の進行もなく、働いている人も多くいます。病名から全身麻痺になる重症の難病と誤解しないように注意が必要です。筋肉が疲労しやすいため、例えばビンのふたを開けるのに手助けを必要としたり階段を上るのに困難があったり、休憩なく1日働くと、まぶたが落ちてきたり、声がかすれてきたりすることを典型的な症状とします。休憩がないと短時間勤務しかできない人でも、途中で横になれる短時間の休憩を組み込めばフルタイムで働くことができる場合もあり、一日の仕事の組み方や休憩の取り方によって無理なく働けるかどうかが大きく左右されます。これらの症状が重い一部の人の場合、上肢・下肢あるいは視覚障害等で障害者手帳の対象となる場合があります。エ  進行性の神経筋疾病(パーキンソン病、脊髄小脳変性症等) パーキンソン病は高齢者に多い病気ですが、その10%程度は40歳未満で発症し若年性パーキンソン病と呼ばれます。症状を一時的に抑える特効薬があり、薬が効いている時には障害のない人と全く変わらないのに、数時間で薬効が切れると体を動かせなくなるという「ON-OFF症状」という特徴があります。10年以上かけて病気が進行し、薬が効きにくくなったり、薬の副作用が現れたりします。周囲に病気を隠してストレスを抱えている人も多くいます。 脊髄小脳変性症は、病気のタイプによっては、より若い年齢での発症があり、発症時が就職活動と重なることもあります。特効薬はなく、運動障害が10~25年程度かけて、ゆっくりと進行します。 この他、進行性の神経筋疾病には、発症から数年で全身麻痺に病状が進行する場合もあり、症状の軽いうちに主治医や本人と集中的な情報交換を行い可能な対策をとることが重要になります。オ 多発性硬化症/視神経脊髄炎 多発性硬化症/視神経脊髄炎は、脳や脊髄の中枢の神経の炎症が起こりやすい病気です。様々な部位の神経が炎症を起こすと、対応する様々な感覚(視覚等)、運動機能が障害を受けるため、症状は多様で、炎症の度に障害が悪化し、中年以降に身体障害者手帳の対象となっている人が多くなっています。その一方、最新の治療、服薬や自己注射、自己管理(過労を避ける、保温、栄養等)によって、無症状に近い状態で長期に生活できる人も増えています。過労等が症状悪化のきっかけになりやすいため、仕事内容や勤務条件を検討し、休憩をとりやすくし、必要な通院ができるようにして、神経の炎症をなるべく起こさないようにし、後遺症を残さないようにすることが大切です。カ 皮膚疾患(神経線維腫症等) 皮膚疾患である神経線維腫症等では、皮膚の傷つきやすさによる直接の職務遂行上の制限だけでなく、顔面や目立つ外見での腫瘍他の変化により周囲からの「感染するのではないか」等の無理解による制約を受ける場合があります。神経線維腫症は、皮膚等の腫瘍(できもの)や色素班(しみ)を特徴とする病気で、職務遂行に影響するような身体的、精神的な機能障害は基本的になく、病気が感染するおそれもありません。顔面等の腫瘍が大きくなると手術が必要になることがあります。キ 網膜色素変性症 中途の視覚障害の代表的な原因疾病です。最初は夜間や夕方、薄暗い部屋でものが見えなくなる症状が現れ、その後、一部の視野が見えなくなる等、ゆっくりと視覚障害が進行していくため、通勤時間の配慮等が必要になってくることもあります。 視覚障害の進行には時間がかかるため、退職年齢までに失明するとは限りませんが、状況に応じて視覚障害者用の支援機器等を早めに検討するとよいでしょう。支援機器を活用すれば、たとえ失明しても、文書を読んだり書いたりといった事務的仕事も十分に続けることができます。また、視覚障害関係の団体に相談する等、本人の生活設計

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