令和4年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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第8節 その他の障害者るとよいでしょう。例えば、「繁忙期でも必要な通院を自覚的に行うことは結局は就業が安定して職場のためになる」「できないことばかりを言うのではなく、病気でも何ができるかを積極的に上司等とも相談して考えていく」「職場の配慮については、お互い様であっても、感謝の気持ちを伝えるようにする」といった助言は、障害者職業生活相談員からもあるとよいでしょう。エ 休職後の復職支援 難病は働き盛りでの突然の発症も珍しくなく、最初の激しい症状で入院し、難病という診断・告知に本人も企業も情報不足のまま自主退職等となり、その後数ヶ月で症状が安定し、十分復職が可能であったことが分かったという例が少なくありません。したがって、従業員が難病で入院・休職となった時には、早めに主治医等から治療の見通しや就労可能性について情報を収集するとともに、会社の休職規程等を踏まえ、不必要な退職を防止し、スムーズな復職につなげる支援が重要です。オ 弱点よりも得意分野を中心とした業務配置 難病のある人は職務上の経験を積み、判断力等の管理的な仕事能力の高い人も多くいます。症状が進行する病気で身体機能が障害されても、知的能力には影響がない病気も多くあります。情報通信技術の進歩により、通勤の負担の少ない働き方や、仕事の進め方にも多くの可能性があります。10年以上かけてゆっくりと症状が進行する病気も多く、本人の得意分野を活かせるように、本人、主治医、職場等でよく情報交換し、長期的視野で働き方の多様化に向けた就業規程の改正も含め、支援機器の導入、キャリア計画や職業訓練、テレワークの導入等、多様な方策を検討するとよいでしょう。 難病のある人への合理的配慮の提供のためには、難病の症状による仕事への影響や必要な配慮事項を正確に理解する必要があります。難病医療は日進月歩であり、また難病による症状は多様かつ個別的であるため、正確な情報は専門の主治医から得る必要があります。主治医、職場、産業医等のコミュニケーションを促進し、治療と仕事の両立支援をスムーズに実施するためには、厚生労働省の「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」3)に沿うとよいでしょう。がんの両立支援が先行していますが、難病についても対象となっており、2020年3月からはその参考資料としての「企業・医療機関連携マニュアル」の事例編にも難病が追加されています。① 主治医への勤務情報提供と意見書の要望 両立支援の枠組みでは、まず、労働者である患者本人から勤務情報を主治医に提供し、両立支援のためという目的を明確にして本人の同意の下で主治医の意見書を求めます。仕事内容や職場の状況が分からなければ主治医としても適切な判断は困難です。また、職場としての両立支援の取組に必要な情報や疑問点を明確にして意見を求めることで、必要な情報を得ることができます。特に、外見からは分かりにくい難病の症状や留意事項については、専門の医師から具体的な情報提供を得ることが、職場の理解と協力を促進するために不可欠です。主治医の意見を求める際には、機微な健康情報を取り扱うことになるので、産業医等がいる場合には、産業医等を通じて情報のやり取りを行うとよいでしょう。ア 特に禁止や留意すべき業務等 疾病の種類や重症度により、個別の機能障害や、失神・脱力発作、突然の不動状態、免疫低下、皮膚の障害等、個別の症状による、本人の健康状態の悪化、職場での安全確保の観点を踏まえて、特定の業務を禁止したり、特別な留意をしたりする必要がある場合があります。イ  定期通院等のために休暇や出退勤時刻の調整の必要性 たとえ体調がよく、特に問題がない場合でも、定期的検査や服薬の調整、医療的な相談等は、急な体調悪化や入院、休職、障害の悪化等を予防するために重要な意義があります。専門病院では休日診療が受けられないことも多く、受診予約日に無理なく通院ができるような配慮が必要な場合もあります。ウ 就業中の休憩や疾病管理等の配慮の必要性 疲労や痛み等は本人の自覚症状以外では分かりにくいので正しい理解が重要です。エ 症状の進行や治療の見通し 進行性の疾病なのかそうでないのか、進行性の場合は現在の仕事がいつごろまで継続可能なのか。進行性でない場合は、どの程度症状が安定しているのか。休職後の復職については、どれくらいの期間で復職が可能なのか、原職復帰は可能な185⑶ 治療と仕事の両立支援の効果的活用

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