令和4年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
187/360

……2高次脳機能障害186のか。これらについて専門の主治医から必要な情報を得ることが必要です。②  主治医の意見書を踏まえた両立支援プランの作成 主治医の意見書を踏まえて、職場と本人で、具体的な両立支援プランを検討します。その内容は話し合いの結果を共有するものとして、職場として、本人、所属長、人事労務担当者、産業医等の同意を得て作成します。 治療の方針や見通しを確認し、休職後の職場復帰や体調管理と両立できる仕事内容や勤務条件の調整スケジュール、職場としての具体的な就業上の配慮事項、フォローアップ面談のスケジュール、その他、同僚への説明の方針、突然の体調悪化にも対応できるように、チームで引き継ぎを意識した仕事の仕方にすること、上司が異動する時には引き継ぎをすること等、話し合いの結果を文書として確認し共有します。 両立支援プランは、本人や職場の状況の変化に応じて、見直すことも必要です。特に、治療の見通しが分かりにくい状況の場合は、当初の両立支援プランについて一定期間後に見直すことを前提として作成することが適切な場合もあります。③ 専門的支援や制度の活用 治療と仕事の両立支援は、就職後の従業員を対象に実施されるもので、職場の関係者としての産業医・保健師・看護師等の産業保健スタッフや医療機関の関係者、さらに、地域の産業保健総合支援センターが専門的支援を提供します。また、両立支援 高次脳機能障害は、脳血管障害(脳梗塞や脳出血)や脳外傷(事故や転倒)等がきっかけとなり生じる認知機能の障害です。職業生活を送っている私たちにとって、いつ、誰が、どこで受障してもおかしくない身近な障害です。 しかし、高次脳機能障害は脳機能の障害であるが故に外見上その特性が見えにくく、やる気や性格の問題といった誤解を受けてしまう可能性もあります。職業生活を共にする者が基本的な障害特性を理解しておくことは、職場内での誤解に端を発した悪循環を防ぐことに繋がります。また、高次脳機能障害は、周囲の環境によってもその状態像が大きく変わる場合がありまコーディネーターがこれらの関係者の連携を促進します。 一方、難病のある人の就職採用時においても、早めに治療と仕事の両立支援を想定した、本人や支援機関との情報交換が重要です。ハローワーク等からの職業紹介の場合には、その前提として、主治医等の確認が済んでいる場合もあります。 また、難病法により、各都道府県には難病相談支援センターが設置され、ハローワークや医療・保健・福祉機関、患者会などとの連携により就労を含めた相談や支援を行う拠点ができています。また、ハローワークには、難病患者就職サポーターが配置され、その他、地域障害者職業センター、医師や医療ソーシャルワーカー等も難病のある人の就労支援を行っています。【参考文献】1…)障害者職業総合センター:「難病のある人の雇用管理マニュアル(2018)2…)障害者職業総合センター:「難病のある人の就労支援のために」(2016)3…)厚生労働省:「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」(2019)4…)治療と仕事の両立支援ナビ…https://chiryoutoshigoto.mhlw.go.jp/5…)障害者職業総合センター:「難病のある人の職業リハビリテーションハンドブックQ&A」(2021)す。周囲の関り方やちょっとした配慮がきっかけで職業生活に適応できるようになることも少なくありません。 ここでは、高次脳機能障害の基本的な特性及び職場でできる基本的な配慮について述べます。 高次脳機能障害の状態像は様々です。脳の損傷部位等により認知機能の障害の出方が様々であるだけでなく、受障年齢、生活(就業)環境等の影響によって様々な課題や支援ニーズがあります。一人ひとりの特性や状況を理解した上で、個人に合った対応や配慮を(春名 由一郎)⑴ 高次脳機能障害とは

元のページ  ../index.html#187

このブックを見る