令和4年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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レビー小体型認知症/パーキンソン病による認知症 4.1%外傷による認知症4.2%前頭側頭型認知症9.4%血管性認知症194その他12.6%アルツハイマー型認知症52.6%17.1%図1 若年性認知症の原因疾患の内訳② 若年性認知症の実態若年性認知症の全国疫学調査はこれまでに3回行われており、最新の結果が令和2年3月に公表されました(基準日は平成29年1月1日)。それによると、全国の若年性認知症の人は35,700人であり、人口10万人(18~64歳)当たりの有病率は50.9人でした。前回平成21年の調査1)ではそれぞれ、37,800人、47.6人でしたので、有病率は若干増加しているのに有病者数が減少しており、当該年代の人口が減少しているためと考えられます。高齢者の認知症では、年齢階級が5歳上がるごとに有病率が倍増する傾向がみられますが、若年性認知症においても40歳代以降で、このような傾向がみられました。また、男性に多い傾向は同様でした。発症年齢は平均で54.4歳であり、前回の51.3歳より3歳ほど上がっていますが、働き盛りの年代であることには変わりありません2)。日常生活自立度は、Ⅲ(日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが日中を中心として見られ、介護を必要とする:Ⅲa、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが夜間を中心として見られ、介護を必要とする:Ⅲb)が約3割と最も多く、次いでⅡ(日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが家庭外で多少見られるが、誰かが注意していれば自立できる:Ⅱa、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが家庭内でも多少見られるが、誰かが注意していれば自立できる:Ⅱb)が約2割でした。基本的な日常生活動作では、歩行と食事では約6割が自立していましたが、排泄、入浴、着脱衣では自立は5割以下であり、2割以上の人が全介助を必要とし、介護者の負担が大きいことが明らかになりました。⑵ 若年性認知症者の雇用の現状③ 原因となる疾患前2回の調査では、原因疾患の中では脳卒中が原因である血管性認知症が最も多いとされましたが、今回の調査では、アルツハイマー型認知症が最多でした(図1)。次いで、血管性認知症、前頭側頭型認知症、外傷による認知症、レビー小体型認知症/パーキンソン病による認知症となりました。アルツハイマー型認知症と血管性認知症の順位が入れ替わった要因としてはいくつか考えられますが、1)脳血管障害に対する予防啓発が進んだこと、2)アルツハイマー型認知症をはじめとする神経変性疾患による認知症の診断精度が向上したことなどが挙げられます。さらに、脳血管障害に基づく若年者の認知機能障害を認知症としてではなく、高次脳機能障害として取り扱い、そのための制度やサービスにつなげる傾向にあることも影響しているかもしれません。④ 老年期認知症との違い若年性認知症は、65歳以上で発症する老年期認知症と、医学的にはほぼ同じですが、いくつかの特徴がみられます。すなわち、1)発症年齢が若い、2)男性に多い、3)異常であることには気がつくが、認知症と思わず受診が遅れる、4)初発症状が認知症に特有でなく、診断しにくい、5)経過が急速である、6)認知症の行動・心理症状(BPSD:Behavioral…and…Psychological…Symptoms…of…Dementia)が目立つと考えられている、7)経済的な問題が大きい、8)主介護者が配偶者である場合が多い、9)親の介護などと重なり、重複介護となることがある、10)子供の教育・結婚など家庭内での課題が多いことです。65歳未満で発症する若年性認知症は現役世代特有の課題を抱えることがあります。それは、本人や家族の問題であるだけでなく、勤労者や社会人としての役割を果たす上で社会に対する影響が大きいことです。疾患の進行により退職すると経済的問題が生じるだけでなく、居場所がなくなり、社会的な役割が果たせなくなるなど個人の尊厳に関わることにもなります。認知症は進行する疾患であり、治療薬はあるものの根本治療にはいたっておらず、診断されれば、仕事ができなくなると考える人も少なくありません。しかし、一旦退職してしまうと、再就職ができたとしても、同等の収入額を維持することは困難であることから、可能な

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