令和4年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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196現在いると回答した企業では、若年性認知症と軽度認知障害の人は、1人ないし2人であり、若年性認知症疑いの人は1人ないし数人でした。現在いる若年性認知症の人の実数は13人、若年性認知症疑いの人は10人、軽度認知障害の人は6人でした。現在も若年性認知症の人等がいると回答した企業では、若年性認知症の就労中の人は5人(38.5%)、休職中が7人(53.8%)であり、若年性認知症疑いの就労中の人及び休職中の人はそれぞれ4人(40.0%)であり、軽度認知障害の就労中の人は3人(50.0%)、休職中は1人(16.7%)でした。会社の対応の中で、業務内容については、「他の業務・作業に変更した」がもっとも多く、約6割であり、次いで「労働時間の短縮・時間外労働削減」「管理職業務からの変更」が同じ割合(約16%)でした。その他としては「休職とした」が多く、「退職した」も見られました。課題としては「本人の状況を把握し、今後の対応を検討するため、医療機関受診時の同席を求めているが、本人の同意が得られていない」「仕事を継続するために、周囲にどこまで開示して理解を得るかが難しい」ことがあげられました。取り組みとしては「通勤方法を家族と相談し、車の運転をさせない」「業務は必ず2人以上で実施する」「営業部門から人事部へ異動」「ジョブコーチの協力により業務変更」などでした。報酬・雇用に関しては、「作業能力低下でも報酬維持した」がもっとも多く6割以上であり、次いで「話し合いで合意退職」でした。課題として「鉄道業なので危険な作業もある。配置換えも納得しない人もいる」「通勤中及び勤務中の本人の安全確保及び事故防止」があげられ、取り組みとしては、「契約期間が満期となったら、契約更新を行わない事とする」「休職とせず業務継続を図り給与を維持したが、1年後、症状進行により給与を見直し、降級を実施した」「作業内容を変更したが、業務定着が不可能となり、合意退職した」などがありました。若年性認知症の人の就労継続支援に関する相談機関に関する知識では、約5割の企業で、「市町村の相談窓口」を把握しており、次いで、「地域障害者職業センター」が約4割でした。「その他」として、「従業員に認知症サポーターがいる」「認知症110番」「民生委員」などが挙げられました。若年性認知症と診断された従業員が利用できる制度やサービスに関しては、知っていると答えた企業がもっとも多かったのは「障害者手帳」であり7割以上でした。次いで、「高額療養費制度」「障害年金」「傷病手当金」「確定申告による医療費控除」「介護保険制度」「障害者雇用率制度」が6割以上でした。一方で、これらの制度を実際に利用している企業は少なく、最も多かった「傷病手当金」でも8.3%で、無記入の企業が多くみられました。「その他」の制度として「成年後見制度」が挙げられました。認知症が進行すると、次第に言葉で意思を伝えることが難しくなり、対応に苦慮するでしょう。言葉によるコミュニケーションは私たちの日常で最も重要であり、言葉が通じないと、認知症の人とのコミュニケーションは難しいと考えてしまいがちです。しかし、言葉以外でもコミュニケーションは可能であり、認知機能が低下しても、この「非言語的コミュニケーション」は保たれているのです。また、単に情報を伝えるだけでなく、コミュニケーションを通じて、お互いを信頼し、仲間意識を分かち合い、その人の存在を認めるという意味もあります。具体的には、認知症の人は注意障害のため、集中できないことが多いので、きちんと向き合い、アイコンタクトをとることで、話し手に集中してもらいます。目の高さを合わせ、名前を呼んだりして注意をひきます。周囲が雑音などでうるさかったり、照明が明るすぎたりする場合はなるべくそれらの原因を取り除きます。静かな環境に移動してもよいでしょう。また、言葉だけでのコミュニケーションが難しくなってきた場合には、質問や会話の内容に関連した実際の品物を示すとよいでしょう。言葉に身振り(ジェスチャー)を付けたり、わかりやすい文字で書いたり、スマートフォンなどの画面に表示したりすることも有効です。視覚以外にも、音やにおいなどが理解の手掛かりになることもあります。伝える側の態度や顔の表情も大切です。表情が重苦しかったりすると、認知症の人は敏感に反応します。また、話し方も早口にならないよう、ゆっくりと穏やかなトーンで話します。会話の時には、ものの名前がなかなか出てこないということがよくあります。質問の時には「おやつは何がいいですか?」といった開放型の質問には「さあ・・なんでもいいです」としか答えられなくても「お饅頭とケー⑸ 接し方のポイント6)⑶ 若年性認知症者に対する雇用上の配慮⑷ 相談機関や制度・サービスの認知度

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