令和4年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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198…者にとっても企業にとってもメリットがあります。しかし、これらの対象となる疾患とは異なり、若年性認知症は人数も少なく、認知度が低いだけでなく、現時点では治癒・回復することが困難で、進行する疾患という特徴があります。そのため、企業においては、若年性認知症に対する理解がまだ乏しく、従業員に該当者がいた場合の対応にも遅れが出ていると考えられます。退職すると収入が減り、若年性認知症の人のいる世帯では、経済的に困難な状況になります。既に報告したように、家族調査において、認知症になってからの世帯収入は6割で減っており、家計状況は、「とても苦しい」と「やや苦しい」が合わせて4割でした7)8)。さらに調査時の困りごととして、今後の生活や経済状態に不安がある」が上位に挙げられており、経済的な問題が不安の要因として大きいことは明らかです。わが国では、若年性認知症対策は常に認知症施策の柱の1つとして挙げられてきており、近年は、特に就労継続支援に焦点が当てられ、若年性認知症の人や家族のための相談窓口を各都道府県に設置し、ニーズに合った関係機関やサービス担当者との調整役としての若年性認知症支援コーディネーターを配置するなどの施策が行われています。企業においては、障害者雇用については一定の理解があり、対応が可能となってきており、特に身体障害者は今回の回答企業のほとんどで雇用されていましたが、それ以外の障害者を雇用している企業の割合はこれより低い傾向にありました。若年性認知症に関しても、障害者と捉えて、今後、就労継続への取り組みを進めていくことが期待されます。今後、企業に対し、疾患としての認知症についての理解を深め、治療と仕事の両立支援を行うことや、障害者雇用の面からも就労継続支援に対応できる体制がとられることが望まれます。(小長谷 陽子)【引用文献】1)朝田隆.総括研究報告.厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究)「若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究」平成18年度~平成20年度総合研究報告書.2009:1-212)日本医療研究開発機構(AMED)委託研究事業.若年性認知症の有病率・生活実態把握と多元的データ共有システムの開発.令和2年度総括・分担報告書.代表:粟田主一.令和3年3月31日3)小長谷陽子、柳 務.企業(事業所)における若年認知症の実態-愛知県医師会認定産業医へのアンケート調査から 日本医事新報 4456:56-60,…20094)田谷勝夫、伊藤信子.若年性認知症者の就労継続に関する研究Ⅱ-事業所における対応現状と支援のあり方の検討-独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 調査研究報告書No.111 20125)小長谷陽子.企業等における若年性認知症の人の就労継続の実態.厚生の指標 66(8) 18-24 20196)小長谷陽子 編著.本人・家族のための若年性認知症サポートブック.中央法規 東京 20107)小長谷陽子.若年性認知症の人の就労・生活実態と効果的な支援への課題.労働の科学70(8)4-8,…20158)小長谷陽子、渡邉智之.全国15府県における若年性認知症者とその家族の生活実態.Dementia…Japan…30…(3),…394-404,…2016Q&A【問】難病等による障害のうち、事業主の障害者差別禁止と合理的配慮提供義務の対象となるのは、障害者手帳のある人のみである。(解答と解説はP348に記載しています)

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