令和4年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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30承認、団体交渉、社会対話などが含まれる、③社会的に責任のある労働慣行は、社会の正義と安定に必要不可欠である、と示されています。近年は企業活動における人権侵害に関わるリスク把握と発生の予防や軽減を図る人権デューデリジェンス(Due…Diligence)が以前に増して求められるようになってきています。これは当該企業にとどまらず、グローバルな企業のサプライチェーン(供給網)も含まれるとされています。OECD(2011)11)の「IV.人権」の「人権に関する注釈」に記されている内容を把握して対応を検討していく必要があるでしょう。雇用管理の面で注目される考え方であるダイバーシティ(diversity)は、一律ではないのですが、米国の雇用機会均等法委員会の「ジェンダー、人種、民族、年齢における違いのことをさす」とされています。そしてこうしたダイバーシティマネジメントの核心は…Singh,V.及びPoint,…S.(2004)12)によれば「多様な人材を組織に組み込み、パワーバランスを変革し、戦略的に組織変革を行うことである」とされています。また、ダイバーシティマネジメントの第一の目的は「組織のパフォーマンスを向上させることにある」とされています。我が国の現状はどうでしょうか。例えば、ジェンダーの格差の状況では、内閣府(2021)13)によれば、世界経済フォーラム(World…Economic…Forum:WEF)が公表するジェンダーギャップ指数(Gender…Gap…Index:GGI)において、日本の総合スコアは0.656であり、順位は156か国中120位(前回2019年は153か国中121位)でした。前回と比べて、スコア、順位ともに、ほぼ横ばいですが、このスコアならびに順位は、先進国の中で最低レベルであり、アジア諸国の中で韓国や中国、ASEAN諸国より低い結果であったとしています。2018年は149カ国中110位でしたので、ギャップは一層広がったことを認識する必要があります。障害者雇用に関しては、我が国においても「障害者の権利に関する条約」の批准に際し、障害者基本法の改正とその基本理念を具現化するための「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」を2013年6月に制定、労働の分野については、障害者雇用促進法が同じく6月に改正され米国においてダイバーシティの原点となった「公民権法Civil…Rights…Act…of…1964」や「障害をもつアメリカ人法…Americans…with…Disabilities…Act」の概念である「合理的配慮」の考え方が雇用管理の現場に導入されています。厚生労働大臣が差別禁止と合理的配慮の提供に関わる具体的内容について指針14)15)を定めています。障害者雇用の現場において、この「指針」に基づく対応をコンプライアンスとして捉えるのか、前述のダイバーシティマネジメントの考え方に立ち、より積極的に企業戦略として進めていくのか、今後この課題への対応が注目されます。(眞保 智子)Q&A【問】人権デューデリジェンス(Due Diligence)は、企業活動における人権侵害のことである。(解答と解説はP347に記載しています)図 SDGsロゴイメージ出典:国連広報センター

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