令和4年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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1法定雇用率の達成は重要な経営課題の一つ2社内での障害者雇用支援の仕組みづくり1第34従業員の雇用管理は、それぞれの企業が自らの判断と責任のもとで行うべきものですが、一方、企業は社会的な存在であり、その社会のルールである法を遵守する義務があります。特に障害者の法定雇用率制度は企業の社会的連帯の理念に基づいて定められたものであり、従業員43.5人以上の企業にとっては、この法定雇用率(2.3%)を達成することは重要な経営課題の一つといえます。障害者雇用の拡大は大きな社会的課題です。障害者のことは「福祉の問題」であり企業が行う人事労務管理とは関係がない、法定雇用率制度への対応も未達成部分について納付金を納める方法を選択すればそれでよい、という発想はますます通用しなくなってきています。企業行動の変化が社会を変えていきますし、社会もまた障害者雇用に積極的な企業への支援を惜しまないはずです。また最近では、SDGsに取り組むことが企業の社会的責務になっている中で、人事労務管理における考え方として「ダイバーシティ・マネジメント」が注目されており、女性や高齢者、外国人などと並んで障害者もその対象となってきています。グローバル化や技術革新の進展、従業員の価値観の多様化など、経営環境が変化する中で、人事労務管理についても、従業員個々人の能力や価値観の多様化をこれまで以上に重視したマネジメントへの改革・転換企業は社会の一構成員として経済活動をしています。以前は、民間企業の事業目的は配当や株価の上昇などを通じた株主への利益還元や商品、サービスを通じての顧客満足度など経済活動が主とされ、フィランソロフィーなど社会貢献はあくまで企業の自主的活動とされていました。しかし、昨今はSDGsに代表されるように、社会全体においてサステナビリティー(環が求められています。障害者は障害のない人と比べ、その能力や価値観などのばらつきが大きいところに特徴があるといわれています。これらを踏まえて、現在は障害者をも組み込んだ新しい人事労務管理のシステムをつくるよいチャンスだともいえます。本章では、企業が行う人事労務管理の中で基本となる雇用管理について取り上げます。「障害者の雇用管理」といった場合、障害のない人とは別の独自の体系を作るというわけではありません。障害者も従業員である以上、一般の雇用管理の対象となります。ただし、障害があることによる不利の部分をできる限り軽減し、能力発揮を促進するために雇用管理上の配慮が必要となることも多くあります。このような点を指して、ここでは「障害者の雇用管理」とよんでいます。本章の第2節から第10節では、雇用管理の各局面である「募集・採用」「配置・職場適応・定着」「職業能力開発」「賃金・労働時間等の条件」「継続雇用・退職」「健康と安全」「職場環境」「虐待防止」「カウンセリング」について解説します。本節では、障害者の雇用管理全般にかかわるテーマについて述べます。一つ目は社内での支援の仕組みづくり、二つ目はハードとソフトの両面からみた職場環境・条件の整備・改善についてです。また、最後に中小企業における障害者雇用の状況にふれます。境、社会、経済の持続可能性)が求められるようになり、企業もまた、社会の一構成員として経済活動以外に、環境対策、人権の尊重、女性や障害者などマイノリティーの活躍の推進なども経営課題として重要視することが求められています。それらの企業では、多様な価値観を持った障害者を採用・育成し、本業での活躍を通じて企業価値全体の向上を図るという取り組みを行っています。これら企業は障害者雇用を経営戦略の一部と位置づけているのです。⑴ 障害者雇用の位置づけ 節障害者の力を活かせる組織・職場づくり

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