令和4年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
48/360

1障害者の配置と職務の適正化3第 職務配置は、採用した従業員の能力の活用を図るための前提となるもので、雇用管理の出発点です。 障害者の個性、体力、職業能力等が担当職務に適合する場合には、当該障害者はその実力を遺憾なく発揮し、満足感・充足感をもって仕事にあたることができるでしょう。一方、配置が適切でない場合、「仕事が自分に合わない」「仕事の技能が足りない」「職場は障害者に理解がない」などの不満が生じることとなり、退職や転職の要因をつくり出す結果となります。 職務配置には「採用時配置」と「配置後の調整」がありますが、前者の採用時配置はおおよそ次のような観点で手続きを進めます。① 人には誰しも一定の個性があり障害も個性の一つである。個性は変化することも考えられるから、適合性についてはその人の能力開発の観点から吟味を行う。② 適合性の判断の重要な要素である体力や職業能力は、将来のその人の能力伸張を見込んで予測しておく。③ 適合性はその人の環境や条件の変化によって可変的であることを理解し、引き続きその検討を怠らない。④ 職務に対する興味や仕事のやり甲斐との間には、ある種の相関関係が考えられるから、職務配置の適合性についてはその人の興味や性格の吟味を怠らない。⑤ 適合性をめざす職務配置はあくまでも予測に基づくものであるから、配置後の調整としての「配置転換」「昇進」及び「昇任」等についてその検討を怠らない。 配置後しばらくたっても当該障害者が期待どおりの成果をあげることができなかったり、生産(事務・販売)工程や作業方法が大幅に変わってしまい作業に適合しなくなったりした場合には、次のような方法で職務の適正化を図る必要があります。① 本人の能力と職務(作業)が適合しているかどうかの把握を行う。② 本人の能力に合わせて職務(作業)の内容を改善するための「職務の再設計」を行う。③ 本人の作業を容易にするための「工具、治工具、機器の改善」や「職場環境の改善」を行う。④ 本人の能力を向上させるための支援を行う。⑤ 本人の能力に向くと考えられる職務(作業)への「配置転換」を行う。 職務の適正化には「昇進」や「昇任」も含まれます。障害者が、障害のない人と同等又はそれ以上に職務遂行ができ、仕事の実績をあげている場合、現在の職位より高い職位へ配置変更することによって本人のモチベーションを高めることができますし、当該障害者が働いていた職務(職位)が空席となるため、新たに別の障害者を雇用することが可能になります。 「職務の再設計」は「障害者に仕事を適合させる」という視点に立って仕事の仕方を見直し、改善していこうとするものです。一般に職場の作業環境や仕事の手順は、障害のない人が働くことを前提としてつくられています。こうした中でいろいろの障害や個性がある障害者をそのまま職務配置した場合、低能率・作業ミス・疲労といった生産管理上のさまざまな問題が発生するのはむしろ当然の結果といえるでしょう。 「職務の再設計」はこうした状況に対応して作業自体の見直しを行い、前述した障害者の職業能力に合わせてその改善を図っていく手法です。次の表1は職務の再設計を進める際の原則的な改善と対策です。 障害者を職場に配置する際、障害者に向く職務(作業)を特定してそこに集中的に配置するケースと、広い範囲で職務(作業)の枠決めをし、本人の能力・適47⑴ 職務配置⑵ 配置後の職務の適正化⑶ 職務の再設計⑷ 集中配置と分散配置節障害者の配置・職場適応・定着

元のページ  ../index.html#48

このブックを見る