令和4年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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6テレワークにむけての職業訓練す。この授業で習った知識を用いて、快適なインターネット環境を構築しましょう。この例のように、無意識のうちに障害者本人がまだ覚えていない専門用語を使ったり、背景や状況を省略することはよくあることです。そのため、専門知識や説明の省略をしても障害者本人が理解できるレベルはどこなのかを、指導者は常に把握する必要があります。そして、専門用語を別の簡易な言葉に置き換えたり、背景や状況の説明を追加したりしてください。もし、置き換えや追加説明が難しいのであれば、図や動これまでも、通勤が困難な障害者や、自宅やサテライトオフィスの方が能力を発揮できる障害者のために、在宅雇用で在宅勤務を行うことができました。ですが、環境面・制度面の整備や雇用管理等のハードルが高く、少しずつしか普及しませんでした。しかし最近では、新型コロナウィルス感染防止対策のひとつとして、情報通信技術を活用した在宅勤務(以下、「テレワーク」という。)が注目されました。そして、テレワークに必要な技術が一気に進歩し、企業もテレワークに必要な制度や機器の整備に積極的になりました。これにより障害者の在宅勤務も、テレワークならハードルも低くなっています。とはいえ、いままで職場で作業してきたことをテレワークに変更することで、働き方や仕事環境に大きな変化が生じます。この変化に障害者本人が対応できるように、何らかの職業訓練が必要になります。ここでは、障害者のテレワークを導入するときの職業訓練について、いくつかのポイントを紹介します。まず、テレワークではPCを使うので、PC操作に関する職業訓練が必要になります。たとえ職場でPCを使って作業をしていたとしても、それは作業という一場面でしかPCを操作していません。テレワークだと、PCの起動、ネットワークの接続、作業の開始と終了、指示の受信や報告の送信、PCの終了といった一連の操作を障害者本人ができる必要があります。また、PCトラブル等の発生時に備えて、状況に応じた判断、遠隔からの指示を受けながらのトラブル対応もできるとよいでしょう。こういった複数の場面での操作を習得する職業訓練を実施します。画といった補助資料を事前に用意してもよいでしょう。さらに気を付ける話し方としては、話す順序が時系列と沿っていないと、障害者本人が混乱をきたす恐れがあります。そのため、指導者は思いついた順番で話すのではなく、作業手順などを参考にしながら、時系列を意識して話しましょう。もちろん、他の原因で指導者が障害者本人に理解しにくい話をしていることもあります。いずれにしても、指導者は障害者本人の反応から話を理解していたかどうかを察知して、理解していないようなら原因を探って改善することが大切です。もちろん、テレワークと相性が悪い障害特性の人もいます。例えば、マウスやキーボードでの操作が難しかったり、長時間ディスプレイを見るのが困難だったり、状況に応じた判断が難しかったり、文字ベースでの指示理解が難しかったりするときは、テレワークよりも職場で勤務するほうが相性が良いでしょう。逆に、テレワークの方が相性が良くて作業効率が上がる人もいます。そこで、PC操作に関する職業訓練を実施するときに、テレワークとの相性についても見極めるようにします。つまり、テレワークで働くかどうかの最終判断は、職業訓練後に決定することがポイントです。また、職業訓練で利用する機器等は、テレワークで実際に使う機器と同じものに揃えることもポイントです。違う機器だと画面表示等が異なることがあり、その些細な違いによって、つまずく要因になることがあるからです。可能なら、テレワークする人は全員同じ機器に揃えたほうが、利用方法やトラブル対応を説明するときに楽になります。次に、PC操作の習得後は、社内でテレワークをトライアルすることがポイントです。職場内の個室を自宅にみたてて、障害者本人は個室に一人で居て、オンラインと電話の指示だけで作業をします。これなら、もし障害者本人が対応できない事態が発生したとしても、すぐに支援者が駆けつけることができます。それに加えて、障害者本人はテレワーク時の孤立感について、支援者は障害者本人の体調判断について、どの程度なのか確認できます。そして、テレワークを本格的に開始する前に対策を立てることができます。67Q&A【問】障害者が理解しやすい説明にするために、指導者はあえて一方的に話し続けたほうがよい。(解答と解説はP347に記載しています)

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