令和4年度障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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⑴ 障害受容と支援方法⑵ 復職時に考慮すること1中途障害者の継続雇用6第第6節 継続雇用・退職 在職中に事故や疾病により障害が発生した場合、療養に専念するため離職を余儀なくされるケースもありますが、本人の立ち直りと関係者の努力と適切な対応で、職場に復帰できた例も数多くあります。 平成28年4月から雇用する障害者に対して合理的配慮の提供が義務化されました。可能な限り、中途障害になった方を再び職場に迎え入れることができるよう考えてみましょう。 事故や疾病によってある日突然、障害が発生したことに対するショックには、想像を絶するものがあります。本人は、自分の置かれた状態がなかなか把握できず、不安や精神的葛藤から脱出できずにいることが考えられます。 障害の受容には、通常、かなりの時間が必要です。一般に、 ①ショック期(茫然自失の段階)、②否認期(心理的防御反応から障害否定の段階)、③混乱期(現実を否定し切れなくなり、混乱の段階)、④努力期(依存から脱し、価値転換の段階)を経て、⑤障害の受容へと進むと言われています。 本人が精神的負担に耐え切れないような場合は、臨床心理士、公認心理師や産業カウンセラーによるカウンセリングを活用したほうがよいでしょう。社内にそのような体制がない場合もありますが、近年では従業員支援プログラム(EAP:Employee…Assistance…Program)…の一環としてこのようなカウンセリングサービスを有償で提供する企業も出てきています。 所属部署の上司、産業医、産業保健師等の健康保健スタッフと主治医との連携によるサポートに加え、就労支援機関のスタッフや家族、友人、同僚等、身近にいる人達で本人を支えるネットワークをつくりあげることも効果的です。 復職が可能かどうかの判断は主治医や産業医の意見をもとに、本人の希望や障害の状況、職務遂行能力、職場環境を踏まえて行います。社内の関係者(人事担当者、産業保健スタッフ、障害者職場定着推進チーム等があればそのメンバー等)が協議し、本人のキャリアと残存能力を踏まえ、必要なら慣らし勤務(短時間勤務・時間外勤務制限・出張制限等)から始めます。まずは、休職前と同じ職場、同じ業務への復帰を検討しますが、現職復帰が難しい場合はあまりこだわりすぎず、別の職場、業務への復帰を考えます。復職の過程で、地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターなど就労支援機関のスタッフから専門的な視点で客観的なアドバイスを受けることも有効です。 残存能力の活用と体力維持を考慮しつつ、OFF-JTや自己啓発制度も活用して、潜在的な機能や能力を引き出す努力を行います。 以前の自分が忘れられず落ち込むこともありますが、これは本人自身が乗り越えなければならないハードルです。必要に応じて産業医、産業保健師等の健康保健スタッフや就労支援機関のスタッフの協力を得ながら相談、援助を行い、本人を支えるネットワークで見守っていることを伝えながら支えてあげましょう。 本人の問題としては、①身体的、精神的機能はどの程度回復しているか、②今後の通勤等にケアが必要か、③本人は障害を受容できているか、④残存能力がどの程度あるか、代替機能を円滑に活用できているか等であり、受け入れる職場の問題としては、①本人の的確な能力評価、②現職復帰か、配置転換か、③労働条件の変更の必要性(治療との両立のための労働時間等)、④受入態勢の構築、⑤障害についての正しい知識の有無、⑥雇用支援・職場の支援体制等です。 地域障害者職業センター等、外部の専門機関のノウハウも活用しながら、課題を一つ一つ明らかにし、解決していきます。この際、言うまでもなく、本人の自立性、主体性を生かすことがポイントとなります。  身体障害者の場合、身体障害者福祉法に定める一定の障害が残れば、主治医と相談し、都道府県知事77⑶ 障害者手帳の交付と手続き節継続雇用・退職

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