⑴ はじめに⑵ 相談員が意識しておくべき大前提 ~信頼関バイステックの7原則不安1:相談内容についての不安不安2:相談をすること自体への不安相談の進捗により解決を図っていく中で軽減・解消不安1を解消するための前提として、軽減する必要性がある⇒そのためには信頼関係の構築が重要5障害者に対するカウンセリング(相談)図1 相談開始(受理相談)時におけるクライエントの2つの不安係の構築~図2 バイステックの7原則108「カウンセリング(相談)」は、「入職時」「入職後数年経過時点」「生活上の大変化が発生などの転機」「退職」など障害者雇用管理におけるどのようなタイミングにおける支援でも、またそれぞれのタイミングにおける様々な目的(状況把握、情報提供、提案)でも、活用することのできる技術です。カウンセリングは汎用性のある重要な支援技術であると言えるでしょう。そこで、本節では相談活動を行う上での基本的な心がけ、具体的な相談技法、障害特性に配慮した相談の進め方について扱います。なお、本節では相談活動については、文章の前後関係により「カウンセリング」あるいは「相談」、カウンセリングを実施する人を「相談員」、カウンセリングを自ら申し込んできたり、あるいは会社側から相談の対象としてすくい上げる人(障害のある従業員の場合が多いと思われますが、場合によっては他部署の障害のない人へ障害者との接し方に関する相談などを行う場合もあるかもしれません)を「クライエント」と呼ぶこととします。カウンセリングの定義から考えるまず、相談を行う上での相談員が意識しておくべき前提について挙げてみます。相談開始(受理相談)時にクライエントは2つの不安を持っている)ということが言われます。それは、相談内容についての不安と、相談をすること自体への不安です(図1)。この2つの不安のうち、前者については相談員とクライエントが一緒にこれから取り組んでいくことになりますので相談の進捗(相談を重ねていったり、教育・訓練を進めていったり、あるいは環境調整を行っていったりすること)により問題解決を図っていく中で軽減・解消していくものです。この相談内容の本丸とも言える前者の不安を解消するための前提として、後者の相談すること自体への不安を軽減させていき、信頼関係を築いていくことが相談を始めるにあたって重要となります。特に、障害者職業生活相談員が相談を受ける対象には、自発的に相談を申し込んでくる人の場合だけでなく、当人は相談の必要を感じていないものの(呼び出すなどして)相談を行わざるを得ない人の場合もあることが考えられます。後者の場合、特に相談をすることへの不安、あるいは不満を感じていることがあります。このような相談をすることへの不安・不満を解消していくためには、信頼関係の構築が重要となります。信頼関係を構築する具体的な方法としては、本項(4)で示す「物理的環境設定」「基本的関わり技法」、あるいは職場を定期的に巡回するなどしてクライエントと接する頻度を増やしてみる、相談の冒頭などに雑談を含めてみる等がありますが、ここではまずソーシャルワーク(社会福祉)分野において対人援助職が信頼関係を構築する上での原則となる、バイステックの示した7原則を提示しておきます(図2)。1.クライエントを個人として捉える2.クライエントの感情表現を大切にする3.援助者は自分の感情を自覚して吟味する4.受け止める5.クライエントを一方的に非難しない6.クライエントの自己決定を促して尊重する7.秘密を保持して信頼感を醸成する
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