令和6年度版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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⑶ その他の重要な心がけ① 相談員とクライエントとの間で「意味」が共有されているか國分康孝によると、カウンセリングとは「言語的および非言語的コミュニケーションを通して行動の変容を試みる人間関係」と定義されています。イヌが…図3 コミュニケーションの成立イメージ・思考など❶ …心理学者メラビアンは、好意や反感を伝える実験において、言葉の内容、声の調子、身振りなどをメッセージの送り手に操作させ、どの程度メッセージの受け手に好意や反感が伝わるのかを検証しました。結果として、言葉の内容の影響力:7%、声の調子や話し方などの影響力:38%、身振りや表情などの影響力:55%でした(図4)。送り手受け手イメージ・思考など犬なんだ!この原則では、「2.クライエントの感情表現を大切にする」や「5.クライエントを一方的に非難しない」といった相談中の心がけが示されているほか、「6.自己決定の尊重」や「7.秘密保持の重要性」といったさらに支援を行う上で前提となる原則についても示されています。また、老人ホームの生活相談員などの対人援助職の中には、相談室や事務所など自分の机に座っているだけでなく、施設内を1日1回など巡回・回遊し、入所者や様々な職員から情報を把握する「ラウンド」という活動を重視している場合があります。障害者雇用の現場でも同様に、相談員が職場内をラウンドすることは、クライエントやクライエントと日常的に接する同僚等を含む職場内の様々な人たちとの信頼関係の構築、また、ちょっとした変化などの情報収集に有効であると考えられます。この定義に含まれる「コミュニケーション」とは何でしょうか。「コミュニケーション」とは、原義的には「送り手と受け手の双方が同じ規則に基づく記号操作を行い、互いに意味を共有し了解しあうこと」を意味するとされています(図3)。つまり、言葉なりジェスチャーなりその他の方法でメッセージを伝えあうのがコミュニケーションですが、そのようなメッセージが何を意味するのかメッセージの送り手と受け手が共通に認識できることがコミュニケーションの成立には必要だということです。この、相談員とクライエントとで意味が共有されるよう留意することは、特に知的障害・精神障害など認知的能力に制約のある人との相談では重要でしょう。相談員の発した言葉がクライエントに相談員の意図した意味で共有されているのかどうか、その都度留意する必要があります。またこのような意味の共有の問題は、クライエントがその言葉を正確に理解している・していないということに限るものではありません。人は、辞書で定義されている内容以上の意味を込めて言葉を用いることがあります。例えば、「おはようございます」という挨拶を取り上げてみます。通常「おはようございます」は朝の時間帯に交わす挨拶であり、「合言葉」のようにこの挨拶が交わされることもあるでしょう。しかしながら、単なる合言葉ではなく、この挨拶言葉を発する際に発話者は相手の身体・心理的状態(今日も元気だろうか?)を確認するという気持ちが含まれていたり、また、遅刻している相手に挨拶をする場合には「なぜ遅刻したの(非難)?」、昨晩の居酒屋のことを思い出して「昨日の飲み会はお疲れ様でした」、といった気持ちを込めることもあるでしょう。つまり、交わされる状況、コミュニケーションの参加者によって、言葉に意味が付加されることもあると言えます。同じ言葉であっても、状況(会話の行われる文脈)によって意味するところは違う可能性があるのです。相談ではこのような言外の意味にスポットを当てることや、言葉と言外の意味のギャップにスポットを当てることもあります。相談員は、クライエントの発する言葉がどのような意味でつかわれているのか、このようなことにも相談員は気を配る必要があります。② 言語表現だけでなく非言語的表現にも着目するコミュニケーションの方法(媒体)について考えてみましょう。日々のコミュニケーションというと、会話や電話、メールなど「言語」によるやり取りがまず想起されるかもしれません。しかしながら、いわゆる「メラビアンの法則」…❶で示されているように、コミュ109

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