ア 基本的関わり行動(視線、姿勢・表情・身振り、口調、相槌など)基本的関わり行動は特に非言語的コミュニケーショ112③-2閉ざされた質問④感情の反映ンに関するものと言えます。相談員の顔の向きや視線に関してですが、顔をクライエントに向けることで、「きちんと話を聞いてもらっている」という印象を与えることにもつながります。また、相談員は相談を行う際、クライエントの感情や考えを把握するために表情をよく見る必要があります。そのために、相談員の視線は原則的に相手(クライエント)の目に向ける方がよいでしょう。ただし、凝視すると圧迫感を与えることにつながりますので、適宜視線を外してもよいでしょう。欧米文化と日本を含むアジアの文化では視線についての捉えられ方は異なりますが、やはりある程度は視線をクライエントに合わせることは必要だと思われます。なお、視線を合わせることに抵抗感がある場合、相手の口元やネクタイなどの頭部の下を見てもよいでしょう。クライエントに自発的に話をしてもらう上で、聞き手である相談員が相槌を打つこともとても重要なことです。相手の話のペースに合わせながら、また基本的には相手の話の流れを妨害しないように、相槌を打つようにしましょう。相槌を打つ際に何種類かバリエーションがあるとよいでしょう。口調や身振り・手振り、姿勢も、非言語的なコミュニケーションの要素として重要なものです。相手の話の内容に合わせて口調を変える、相槌を打つ際にうなずく動作をする、また相手の話に身を乗り出すようにする(相手に対し少し前傾する)といったことも、クライエントに話をしてもらうためには必要でしょう。イ 繰り返し、要約これらの技法はクライエントの自発的な話を促し、クライエントに自分自身の気持ちに気づいてもらうためのものです。「繰り返し」を行うことで、話を聞いてもらっているという印象を与えることに加え、クライエントが自分の考えや感情を改めて認識する機会を提供するこ短めで、一定の範囲内に収まる回答となる質問クライエントの発言の感情的な要素に焦点を当てて相談員が指摘し、共感・受容すること。「何時に帰ったのですか?」(⇒○時です)「○○は△△だということですか?」(⇒はいorいいえ)「つらいと感じているのですね。」「不安な一方で、チャレンジしたい気持ちもあるんですね。」と、以上のことからもっと話をしようという意欲を抱かせるということにつながると考えられます。なお、この「繰り返し」はやりすぎると、かえって話を聞いていない印象を与えることにつながってしまうことや、また相手の発言のどの部分を繰り返すのか(なるべく相手が重要だと感じていると思われることのほうがよい)について留意する必要があります。「要約」は「繰り返し」と似ている機能がありますが、「繰り返し」がクライエントの発言の一部をそのまま繰り返すのに対し、「要約」は相談員が聴いたことを相談員なりにまとめて確認をするという点が異なります。この「要約」も、クライエントの話を整理し、クライエント自身に話について再認識してもらうこと、また相談員が理解したことについて確認し、次の話に進めていく、という役割があります。相談を求める人の中には、問題が複雑に絡み合い、混乱している場合もあります。相談員が相談中、要所要所で要約をすることで、解決には至らないものの、少し頭の中が整理されるというクライエントもいることでしょう。ウ 開かれた質問、閉ざされた質問クライエントの話をさらに探る必要があり、質問をする必要がある場合もあるでしょう。質問には「開かれた質問」と「閉ざされた質問」とがあります。一般的には、開かれた質問の方がクライエントにとっては自由に話すことができるため、多めに使用した方がよい、とされています。ただし知的障害や精神障害のある人にとっては、開かれた質問ばかりではどう答えたらいいのか分からなくなり困惑したり、混乱したりすることも少なからずあると思われます。もちろん、閉ざされた質問ばかりでも、「取り調べ」や誘導尋問のようになってしまうこともあるので、望ましくはありません。クライエントの認知的な能力や、話の内容などを勘案しながら、開かれた質問と閉ざされた質問とのバランスを取っていくことが必要でしょう。なお、開かれた質問のうち、特に「なぜ〜?」とある行為などの理由を相談員がクライエントに聞きたく
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