令和6年度版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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⑶ 障害者手帳の交付と手続きよる休職の場合でも原則として同様に対応します。また、難治性疾患により休職した者等については、職場復帰後の継続的な医療的ケアが必要な場合も多いので、この点についても配慮が必要になります。社内の関係者(人事担当者、産業保健スタッフ、障害者職場定着推進チーム等があればそのメンバー等)が協議し、本人のキャリアと残存能力、継続的な医療ケアの必要性や禁忌事項の状況等を踏まえ、復職のプランを策定します。この際、障害の特性や治療の見通しなど非常にセンシティブな情報を扱うことも多いので、情報共有するメンバーを限定することが必要な場合もあります。フルタイムでの現職復帰が難しい場合には、必要に応じて労働者性を発生させないリハビリ出勤や短時間勤務、緩和出勤、また勤務条件の制限(時間外勤務制限・出張制限・勤務シフトの配慮等)から始めます。まずは、休職前と同じ職場、同じ業務への復帰を検討しますが、現職復帰が難しい場合はあまりこだわりすぎず、別の職場、業務への復帰を考えます。復職の過程で、地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターなど就労支援機関のスタッフから専門的な視点で客観的なアドバイスを受けることも有効です。精神疾患によって休職している者の職場復帰に当たっては地域障害者職業センターや精神科クリニックなどが提供しているリワーク支援を利用することが有効なケースもあります。残存能力の活用と体力維持を考慮しつつ、OFF-JTや自己啓発制度も活用して、潜在的な機能や能力を引き出す努力を行います。以前の自分が忘れられず落ち込むこともありますが、これは本人自身が乗り越えなければならないハードルです。必要に応じて産業医、産業保健師等の健康保健スタッフや就労支援機関のスタッフの協力を得ながら相談、援助を行い、本人を支えるネットワークで見守っていることを伝えながら支えてあげましょう。本人の問題としては、①身体的、精神的機能はどの程度回復しているか、②今後の通勤等にケアが必要か、③本人は障害を受容できているか、継続的な医療的ケアが必要な場合にはその必要性を認識できているか、④残存能力がどの程度あるか、代替機能を円滑に活用できているか等であり、受け入れる職場の問題としては、①本人の的確な能力評価、②現職復帰か、配置転換か、当面の目標と将来的な職務のイメージを構築し、本人と関係者間で共有しているか、③労働条件の変更の必要性(治療との両立のための労働時間等)と見通し、④受入態勢の構築、⑤障害についての正しい知識の有無、⑥雇用支援・職場の支援体制等です。地域障害者職業センター等、外部の専門機関のノウハウも活用しながら、課題を一つ一つ明らかにし、解決していきます。この際、言うまでもなく、本人の自立性、主体性を生かすことがポイントとなります。身体障害者の場合、身体障害者福祉法に定める一定の障害が発生すれば、主治医と相談し、都道府県知事が指定する障害別指定医の診断を受け、その診断書と写真を添付して、市区町村の福祉窓口へ交付申請を行います。精神障害者の場合、精神保健指定医、主治医等の診断書(初診日から6ヶ月経過した後に診断を受けたもの)と写真を添付して、市区町村の精神保健福祉担当窓口へ交付申請書を提出します。手帳の交付申請は原則として本人が本人の意思で行います。なお、精神障害者保健福祉手帳については2年ごと(有効期限は、交付日から2年が経過する日の属する月の末日まで)に更新の手続きが必要になります。なお、知的障害については、「知的機能の障害が発達期(概ね18歳くらいまで)に発生」した場合に診断されるものであるため、中途障害により知的機能の低下が発生した場合や若年性認知症により知能低下を来した場合には療育手帳の発給等はされません。身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳を持つことは、国や地方公共団体の支援を受ける条件になります。身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳の交付を受けるときには、市区町村独自の支援サービス、地域での生活支援サービスについての情報も得ておくようアドバイスします。《相談窓口:居住地市区町村 福祉事務所》また、障害基礎年金、障害厚生年金の申請について、年金事務所・年金相談センターに相談するようにアドバイスすることも望まれます。本人が身体障害者手帳又は精神障害者保健福祉手帳の交付を受けたことを企業が把握した場合は、人事担当者は、企業が障害者雇用率制度等の適用を受けるために手帳の写しを提出して欲しい旨を依頼し、事務所で保管します。この際、利用の目的と範囲を明らかにして本人の意に反したものにならないよう十分に配慮することが必要です。123

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