令和6年度版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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9肝臓機能障害第4節 内部障害者165⑴ 肝臓機能とはるため、最新の情報に基づく啓発が重要です。④ 疾患管理と職業生活の両立の支援服薬や定期的通院がなされていれば、HIV陽性であること自体が仕事上で問題となることはほとんどありません。HIV陽性者の職場での健康管理や安全配慮に必要なことは、産業医等の専門の担当者が相談や支援にあたることが、情報管理上からも適切です。一方、職場の理解について、本人の不安が大きいことから、仕事の進め方について上司等が相談に乗る、職場の同僚との親睦等で人間関係を向上させるといった一般的な職場の取組が重要です。また、一般的に、少し疲れた時に休憩でリフレッシュしやすくすることは、HIV陽性者が仕事を安心して続けやすくするのに効果的です。⑤ 衛生管理や出血事故対処の一般手順HIVの治療が適切に行われていれば感染のおそれはほとんどなくなっており、職場での対策としては、血液感染症を含む一般の感染症予防についての、職場での一般の安全指導や健康教育の範囲で十分です。また、社員寮等で共同生活をする場合でも同様です。具体的には、他人の血液や分泌物には直接触れない。これらは石鹸を使って洗い流すか、それができ肝臓は人体最大の臓器で「体内の化学工場」とも呼ばれ、栄養素の分解や生合成、人体の害となる物質の解毒等の重要な役割を担っています。様々な原因で肝臓機能が永続的に著しく低下すると倦怠感や易疲労感等の症状が強くなり、さらに進行すると延命のために肝臓移植が必要となります。現在、わが国では年間400名程度が肝臓移植を受け、成功率も高くなっています。平成22年4月から、このような肝臓機能障害が、内部障害に追加され、肝臓移植や移植後の医療費の自己負担が軽減されるとともに、身体障害者手帳の交付を受けた者については障害者雇用率制度の対象となっています。通院等をしながらの無理のない職業生活や、肝臓移植の前後にわたる就業継続のために、職場での理解や配慮等が必要です。肝臓は500種類以上の生化学反応を同時並行で行っ【参考文献】1)独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構:「障害者雇用マニュアル102 HIVによる免疫機能障害者の雇用促進」(2010)ない時はビニール袋等でしっかり包んでゴミに出す。出血はなるべく本人が自分で処置する。カミソリ、歯ブラシ、タオル等の血液のつきやすい日用品は他の人と共有しない。傷の応急処置を他人がする必要がある場合には、ゴム手袋を着用し、血液等に触れたらすぐに石鹸を使って流水で洗い流す。傷口等の接触に備え人工呼吸ではハンカチ等をはさむ等を注意するなどです。これらは、当然、HIV陽性者自身も自覚をもって行います。なお、以上のような配慮を行った上でも、例えば治療が適切に行われていないHIV陽性者が出血して意識を失い、他者が傷を負った手で誤って血液に触れてしまった等、感染の危険性が生じる事態は想定可能です。その場合は、迅速に医療機関を受診します。HIVは感染力が弱く、さらに服薬継続中であればHIVウイルス量は低くなっており、必ずしも感染が成立するわけではないので冷静な対応が大切です。医療機関における暴露事故などでは感染防止のために、速やかな抗HIV薬の服薬が勧められています。ていますが、主な機能として、代謝、解毒作用、胆汁分泌があります。人体に必要な糖、脂肪・タンパク質等のほとんどは肝臓で合成されています。また、血液中のアルコールやアンモニア、薬物、ウイルスや毒素等は肝臓において、解毒されたり分解されたりします。さらに、古くなった赤血球を材料にして胆汁を作り腸に送り出しています。肝臓機能が低下すると、必要なエネルギーや栄養の不足や血液中の成分の変化により、倦怠感や疲れやすさ、腹水、血液凝固の低下等が起こったり、解毒作用の低下によって、例えばアンモニアが脳に運ばれて意識障害を引き起こしたり、胆汁分泌が減ると古い赤血球の一部(ビリルビン)が血液中に増加し黄疸を引き起こしたりと、様々な症状が表れます。ただし、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ多少の障害では症状が表れません。また機能回復しやすい丈夫な臓器です。肝炎ウイルスによる肝炎も自然に治癒した

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