⑶ 肝硬変の管理⑵ 肝臓機能障害の状態像⑷ 肝臓移植⑸ 原因疾患について⑹ 雇用上の注意(合理的配慮を含む)166❶ 肝臓機能がほぼ完全に失われた状態。❷ 世界的に見ると脳死の臓器提供者からの移植が多くなっています。我が国でも2010年の法改正により脳死移植例が増えています。り、最新の治療による治癒が増えています。アルコール性の肝障害も禁酒によって多くは回復します。様々な肝臓の病気によって、肝細胞の壊死と再生を繰り返すと、肝臓は線維化して硬くなり、再生能力も失い肝硬変という最終的な状態になります。しかし、その初期には、「だるい(倦怠感)」、「つかれやすい(易疲労性)」といった程度の症状しか表れません。これは、肝臓機能が低下しても、筋肉による代謝機能や、腎臓による毒物の排泄機能等によって代償されているからです(この時期を「代償期」といいます)。現在では、検査や治療法の進歩等により、10〜20年を代償期のまま安定して過ごせる人もまれではなくなっています。肝臓機能障害として障害認定されるのは、原則的には、肝硬変が進行して全身倦怠感や易疲労感等の症状が強く出てきた人や、肝不全❶で延命や抜本的な機能改善のために肝臓移植が必要となった人たちです。先天性の場合もあり、成人後の様々な病気の結果の場合もあります。慢性肝炎等の長期の経過で肝不全になる場合もあれば、急性肝炎で肝不全となることもあります。肝臓移植が成功すれば、肝臓機能は通常レベルに回復します。しかし、移植された肝臓が安定して機能し続けるためには、拒絶反応(移植された臓器を異物として排除しようとする免疫反応)を抑えるための免疫抑制剤を生涯服用する必要があり、また、感染症や病気の再発等の予防のために定期的な外来受診が必要です。このような人たちも、肝臓機能障害として認定されます。肝硬変であっても、安定した代償期で、自覚症状がなければ普通に仕事ができますが、肝臓機能の悪化を防ぐために、重労働や出張、残業等が制限されます。また、食後は横になって休憩することで肝臓への血流を増やすことが望まれます。また、禁酒は絶対です。肝臓機能障害は自覚症状が表れにくいため、仕事で無理をして、状態を悪化させることがあるので、本人の自己管理とともに、周囲の理解と配慮も大切です。倦怠感、易疲労性が強くなり、腹水や黄疸等の症状がでてくると、定期的な検査や治療を受けながら、肝臓移植の待機となります。現在、わが国では年間300〜400名程度が、肝臓移植を受けています。わが国では、生体肝移植といって、近親者等から肝臓の一部を移植する方法が多くなっています❷。肝臓機能の検査結果によって、肝臓移植が決まっても、すぐに移植手術が受けられるわけではなく、数ヶ月〜数年、検査や治療を受けながら通院または入院で待機します。一般的に手術予定日の1〜2週間前に入院し、手術後1〜2ヶ月で退院となり、退院後2ヶ月程度は1週間毎の受診、その後は状態の安定を見ながら月1回程度の受診まで間隔を延ばしていきます。仕事への復帰は人によって異なりますが、手術後、半年前後が多いようです。移植された肝臓の拒絶反応を防ぐために、免疫抑制剤を継続的に服用する必要があります。免疫が抑制されると感染症を起こしやすくなりますが、抗生物質や抗ウイルス薬を服用することで予防や治療ができます。肝臓機能障害の原因は、ウイルスやアルコールによる肝炎が肝硬変や肝がんに進行したもの、薬物によるもの、自己免疫によるものなど多様です。治療や通院の必要性はこれらによっても異なります。ウイルス性肝炎は血液の直接接触でしか感染せず、普通の職業生活や一般的な出血事故への対応や衛生管理ができている職場で他者に感染することはありません。①… 本人の話もよく聞きながら、産業医等の専門職により、仕事内容の検討や、治療と仕事の両立を支えるための検討ができるようにします。本人のプライバシーや人権を守るためにも、必要以上に障害や病気のことを社内に広げることは好ましくありません。… 具体的には、重労働や過労を避ける必要があります。また、食後には横になって休憩できるようにします。肝臓移植後の免疫抑制剤によって感染
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