⑴ 学習障害/限局性学習障害・限局性学習症2発達障害の障害特性第7節 発達障害者185(LearningDisability(LD)/Specific Learning Disorder(SLD))ここでとりあげている障害の場合、学習障害の定義では“知的障害はない”と明記されていますが、注意欠陥多動性障害では、診断基準に知的障害の合併の有無は明記されていません。また、知的障害と合併することの方が多いとされている広汎性発達障害では、合併しない場合を「高機能」自閉症や「高機能」アスペルガー症候群などと呼んで区別することがあります。一方、知的障害の場合の「軽度」は「中・重度ではない」を意味します。発達障害のある生徒への教育対応としては、通常学級や高等学校において特別な支援を行う場合だけでな発達障害は、その定義から診断の時期の多くは子ども時代です。早期からの適切な対応で問題が改善される場合もありますが、反対に深刻になる場合もあります。いずれにしても、成長とともに症状が変わっていくことになるので、まず診断される時期のことをまとめておくことにします。知的障害を伴う発達障害については本章第5節をあわせて参照してください。なお、平成25年5月にアメリカ精神医学会の診断・統計マニュアルが第5版(DSM-5)へと改訂され、平成30年には世界保健機関(WHO)の診断分類がICD-11に改訂されるなど、診断基準については過渡期を迎えています。発達障害に関して従来の診断名や診断基準とは異なる点は、「広汎性発達障害」という分類が「自閉症スペクトラム障害」に変わったこと、広汎性発達障害の中に位置づけられたアスペルガー症候群という診断名も「自閉症スペクトラム障害」に統合されたことなどです。このため、改訂以前の基準で診断された人と、改訂以降の基準で診断されることになる人がおり、当面、診断名は混在することになります。ただし、診断名や診断基準等の日本語版が確定・整備されるまでの間、本節では、DSM-5における診断基準の概要を紹介しつつも、従来の診断名にも配慮し、過渡的な段階に対応させています。医学で障害を診断する場合、「LD」はSpecific…Learning…Disorderを意味しています。教育、臨床の関係者をはじめとして、保護者の多くが使うような「学く、特別支援学級(心障学級など)や特別支援学校(盲・聾・養護学校など)でも特別な支援を行っています。そこで、通常学級や高等学校に在籍する発達障害のある生徒に対して、“知的障害はない”と受けとめることが多いのですが、現実には、“知的障害が軽度”という生徒も含まれます。本節では、知●的●障●害●を●伴●わ●な●い●か●、●伴●っ●た●と●し●て●も●知●的●な●障●害●の●程●度●が●軽●度●で●あ●る●、●広●汎●性●発●達●障●害●、●学●習●障●害●、●注●意●欠●陥●多●動●性●障●害●の●あ●る●人●を中心的な対象としています。この場合、発達障害者支援法の範囲よりも狭くなります。習上の困難のある児童・生徒」、もしくは「教育上の特別な配慮を必要とする児童・生徒」を想定した広い範囲の問題を抱えた対象者を含む用語とは異なっていることになります。【診断基準:DSM-5】読字・算数・書字の特定の領域における困難を踏まえ、学力における問題について、個々人の発達・医療・教育の経過及び家族歴並びにテストの成績と教師の観察評価、教育的介入とその効果等を通して総合的に診断されます。その際、年齢や知能から期待される水準で達成できない状態であることなどが重視されます。【問題への対処】読字や書字の困難がある場合、成人の失語症の言語訓練法として考案されたリハビリテーションの応用が効果的であるとされています。書字の問題では、「かな」に関しては50音表を利用した練習方法により、「漢字」に関してはワードプロセッサーの使用により書字の問題は解消されると考えられています。また、算数の問題では「数概念の形成」の問題なのか、「計算」の問題なのか、「文章題」の問題なのかによって練習方法が違います。特に計算のみが苦手な場合には電卓の利用なども提案されています。【教育用語としてのLD】学習上の諸問題によって学習障害であることを判断する場合の「LD」は、Learning…Disabilitiesにも対応しており、これが教育用語としての「LD」にあたります。表2は文部科学省が示している学習障害の定義です。この定義では、「読む」「計算する」「書く」のいずれかの困難に、「聞く」「話す」「推論する」の困難を加
元のページ ../index.html#187