令和6年度版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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⑵ 注意欠陥多動性障害(注意欠如・多動症/注 意欠如・多動性障害)(Attention-Deficit/ Hyperactivity Disorder : ADHD)表2 現行の文部科学省の定義学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。えています。さらには、教育並びに臨床の関係者の中で、さらに広い範囲を認める立場もあります。こうした立場に立つ人々は、発達性協調運動障害(不器用)、注意欠陥多動性障害(ADHD)をこれに加えている場合があります。最も広い範囲を認める立場では、“社会性に困難がある子ども”をも含めています。これは、主として「教育的な対応が必要な子どもたちの問題を考える」ということを意味していますが、多様な発達障害の特性をどこまで含めるかという問題でもあります。教育用語としての「LD」は広い範囲の多様な学習ADHDは不注意、多動性、衝動性を特徴とする持続性の行動障害とされています。幼児期にはその特徴が認められ、児童期から様々な適応の問題が生じ、否定表3 注意欠陥多動性障害の診断a…)綿密に注意することができない、または、不注意な過ちをおかすb…)注意を持続することが困難であるc…)直接話しかけられたときに聞いていないように見えるd…)指示に従ってやり遂げることができないe…)課題や活動を整理することが困難であるf…)精神的努力の持続を要する課題を避ける、嫌う、または、いやいや行うg…)課題に必要なものをなくすh…)外からの刺激によって注意をそらされるi…)日々の活動で忘れっぽい186不注意a)…手足をそわそわと動かしたり、またはいすの上でもじもじしたりするb)…座っていることを要求される状況でじっとしていられないc)…不適切な状況で走り回ったり、高い所へ上ったりするd)…静かに活動できないe)…"じっとしていない"…または、まるで…"エンジンで動かされるように"…行動する。他の人からは落ち着きがなく、じっとし続けるのが困難なように見える。f)…しゃべりすぎるg)…質問が終わる前に出し抜けに答え始めてしまうh)…順番を待つことや並んで待つことが困難であるi)…他人の邪魔をしたり干渉する上の困難を想定しているという見方もありますので、医学で診断されるLearning…Disorderが「読字」「計算」「書字」に焦点をあてるのとは対照的です。教育用語として使われている「学習障害」は…Learning…Disabilitiesを翻訳した時にあてられた用語のうちの1つです。しかし、教育、臨床の関係者をはじめとして、保護者も本人も、この用語を適切でないとして「LD」と称する場合が多いのです。「LD」という呼称には、根底に“障害が学習に関する能力の限定的な障害であり、その点について配慮し、その障害の克服を手助けしていけば、健常児と同じように知的な能力を発揮できる”という考え方があります。このような考え方を背景として、「障害児と健常児の間の子ども」「グレイゾーンの子ども」であるために、適切な支援をうけることができないという「学習障害」観が成立することになりました。したがって、義務教育のみならず、高等学校以降の学校教育において特別な教育的支援が充実するに伴い、教育の効果に対する期待が一層高まっているといえます。的な自己評価や不安、抑うつなどに悩むことも少なくないといわれます。【診断基準:DSM-5】不注意もしくは多動性・衝動性について、発達水準に照らして相応しない不適応症状が長期(6ヶ月以上)にわたって継続した場合に診断されます。下記の表3のうち、不注意については6項目以上で多動性/衝動性

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