第7節 発達障害者187⑶ 知的障害のない広汎性発達障害(高機能広汎性発達障害/高機能自閉症/高機能アスペルガー症候群)/自閉症スペクトラム障害(High Functioning Pervasive Developmental Disorders:HFPDD /Autism Spectrum Disorder:ASD)頻発する場合に診断される対象となります。また、多動性・衝動性については6項目以上で頻発する場合に対象になります。ただし、不注意も多動性・衝動性も、青年、成人(17歳以上)では5項目を満たす場合に診断されます。また、症状は、反抗、挑戦、敵意、または課題や指示が理解できないなどによるものではないとされています。さらに、多動性・衝動性または不注意の症状のいくつかが12歳以前に存在し、障害を引き起こしていること、これらの症状による障害が2つ以上の状況(例えば学校〔または仕事〕と家庭)に存在すること、社会的・学業的または職業的機能を損なっている、もしくはその質を低下させているという明確な証拠が存在しなければならないこと、とされています。【問題への対処】ADHDは神経心理学的には「実行機能」の回路に障害があるとされ、最近では「報酬系の障害」(例えば“目の前の報酬に反応しやすい等”)としての理解もすすんでいます。改善のために、薬物療法や行動療法が提案されています。このような対応により、ADHDの症状は成人期まで持続するものの、成長とともに問題が改善されていく傾向があるとされています。【自閉症スペクトラム障害について】DSM-5では、「広汎性発達障害」にかわって、自閉症圏の障害としての共通性を重視した診断名として「自閉症スペクトラム障害」が使われています。「スペクトラム」という言葉は「連続している」という意味で使います。図2では、「自閉症スペクトラム障害(Autism…Spectrum…Disorder:ASD)」という用語について、定型発達から典型的な自閉症までを自閉症の強弱で一続きのものとみなす点で、広汎性発達障害を統合する概念であるという考え方を表しています。ここでは従来の診断分類による「特定不能の広汎性発達障害」「アスペルガー症候群」なども自閉症圏の障害であること、しかし、「自閉症」という診断名に比べると自閉症の特徴は軽度であることが示されています。ただし、自閉症の要素(社会コミュニケーション及び対人的相互作用の問題・行動や興味、活動の制限の問題)は共通していても、その現れ方は多様です。自閉症圏の障害にもさまざまあって、見た目には違う症状のように見えても自閉症として連続しているのだ、というものです。また、「スペクトラム」は、知的に障害のある場合もあるが、ない場合もあり、それは連続しているという場合にも使います。高機能自閉症や高機能アスペルガー症候群という表し方をするときには、「自閉症スペクトラム障害」の高機能(知的障害を伴わない)者をさしています。【診断基準:DSM-5】自閉症スペクトラム障害は、自閉症圏の障害として2つの基準にそって診断されます。A 社会コミュニケーション及び対人的相互作用の問題B… 活動や興味の範囲の著しい制限・変化への抵抗などの問題DSM-5では、感覚に対する反応の乏しさや過度の反応に関する点が着目されています。なお、症状は児童期早期に存在しなければならないが、社会的な要求が制限された能力を超えるまで、十分に顕在化しない可能性もあるとされています。【問題への対処】自閉症スペクトラム障害は、認知的・社会的そして行動上の機能に重大な混乱と影響を及ぼす複合的な障害であると理解されています。このため、治療・教育・支援に際しては、薬物療法や行動療法をはじめとしてさまざまな方法が試行されてきましたが決定的な治療法は未だないというのが実状です。個別性に対応した包括的なアプローチが必要とされており、現実にプログラムも提案されています。しかし、このような対応によっても、長期的予後を含め、問題解決の困難な障害であるとされています。高機能の自閉症スペクトラム障害者の場合、言葉の遅れが目立ちにくいことから、一見、コミュニケーションに困難が少ないと受け取られることがありま
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