4就職・定着促進のための配慮事項、支援策第7節 発達障害者189⑴ 職場に適応するうえでの問題の把握⑵ 作業条件の配慮⑶ 指示理解に関する配慮⑷ 環境整備の課題⑸ 家族との連携⑹ 関係機関との連携ハローワークの専門援助部門における障害者の紹介就職・職場定着の実態調査(障害者職業総合センター,…2017)では、2015年7月からの2ヶ月間に就職した発達障害者242名の8割以上が障害者求人に応募して就職していました。また、障害者求人による就職者の定着率の方が一般求人による就職者に比して高く、就職時の機関連携や職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援、就職後学校時代は何とか過ごしても、職場ではうまくいかないという場合に求められる配慮と支援策について考えておきたいと思います。「作業中に問題とされる行動は何か」「いつ・どのくらいの頻度や強さでおこるのか」「その行動がどのような状況(環境や人)でおこるのか」「その行動の後でどのようなことがおきたのか」などを把握することが重要です。また、学習能力の確認も必要です。特に「未修得の学習技能を明らかにすること」「誤り方のパターンの整理・分析をすること」は、問題を改善していく可能性と深く関わります。その他、健康状態を把握し、「体調管理にどのような配慮が必要か」を確認することも重要です。障害特性に合わせて、作業を効果的・効率的に行うことを支援するうえで、作業時間の調整(課題時間の延長など)が必要になる場合があります。また、作業量の調整(課題の数の限定など)が必要になる場合もあります。加えて、作業内容の調整(理解度に合わせた内容への変更など)は特に重要です。その他に、電卓やワープロ、メモ帳、付箋など、障害特性にあった補助具の利用が有効な場合もあります。指示に際しては、スモールステップに分けて順に指示することが有効な場合もあれば、指示の単純・明確化(1度に1つの指示など)や強調化(色分けして指示を示すなど)、障害特性に対応した指示方法の選択の定着支援などは定着を支える要因とされています。しかし、職業リハビリテーションサービスの利用を勧めたとしても「一般扱い」の求人にこだわり、求人条件の変更を受け容れがたい事例も多いのです。障害特性の理解に関する支援については、採用後においても特に慎重に本人の受けとめ方に配慮する必要があります。(話し言葉で指示を出す方がよいか、指示書など文字情報の方がよいか、など)、コンピュータやスマートフォン・タブレットなど興味を引く媒体の使用などが有効な場合もあります。落ち着いて作業に集中できるためには、障害特性にあった環境整備が必要になります。音や人の気配などの刺激に敏感な場合には、過剰な刺激を遮断するためにイヤーマフの装着、パーテーションの設置、作業場所を変更する等が有効な場合もあります。また、こうした環境調整を行う場合、特性や配慮について、職場の同僚や上司と情報を共有することも必要となります。ただし、本人のプライバシーや意向に十分配慮することが何より重要です。問題への対処については、家族との連携がとても重要になります。家族は経験豊富な支援者でもありますし、また、相談者でもあります。特性理解においても行動理解においても、また、健康管理においても、家族と十分に連携することが重要です。本人への期待や指導方針については、家族にも十分フィードバックしながら目標を設定していくことが必要です。職場では障害特性を理解した担当者の配置が重要です。また、生活面の支援をするバックアップ機関との連携も必要になる場合があります。何よりも学校との連携あるいは学校卒業後に利用する機関や移行を支える機関との連携が重要となります。配慮事項、支援策の具体例として「発達障害者就労
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