令和6年度版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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8第1難病等による障害第8節 その他の障害者⑴ 難病等による障害の特徴節 医学の進歩にかかわらず完治が困難な「難病」と呼ばれる病気は多くあり、誰もが発症する可能性があります。我が国では1972年から難病対策を進めてきました。その結果、多くの難病は、治療を続けながら就労を含む暮らしを送れるまでに症状を抑えることができるようになり、既に多くの難病等による障害のある人(以下「難病のある人」という。)が様々な仕事や働き方で活躍しています。しかし、多くの難病は未だ最新治療によっても完治させることが困難であるため、安定した就業継続、障害悪化の防止や早期対応等のためには、治療と仕事の両立支援への職場での理解と協力が不可欠です。それにもかかわらず、体調悪化や疲労や痛み等の、仕事上の配慮を必要とする症状が外見から分かりにくいことが多く、また、「難病」への職場の過剰反応等を心配して、本人が職場に相談しにくい状況もあります。 ここでは、難病のある人が、治療の継続と両立しながら、能力を発揮して継続して働ける職場づくりのポイントを紹介します。具体的には、「難病」についての先入観や誤解にとらわれず意欲があり適性の高い人材を採用する、通院や体調管理を応援する、本人や主治医等とのコミュニケーションにより多様で個別性の高い難病を正しく理解するなどです。 なお、治療で障害の進行が抑えられていれば障害者手帳制度や障害者雇用率制度の対象ではないこともありますが、「難病等による障害」は障害者手帳の有無にかかわらず、すべての事業主の障害者差別禁止と合理的配慮提供義務の対象です。 仕事による疲労は適度の休憩や勤務時間外の体調管理や睡眠、休日を使って疲労回復し、疲労と回復のバランスをとることが職業生活を継続できる大前提です。難病のある人の場合、仕事による疲労の蓄積と休養による疲労回復のバランスが、障害のない人よりも多かれ少なかれ崩れやすくなっています。難病等の症状が悪化した場合の症状は疾病により多様ですが、症状の悪化を防ぎ職業生活を安定させる雇用管理の課題は疾病にかかわらず共通しています。体調悪化の兆し(疲れ、痛み、集中力の低下等)は外見からは分かりにくいことが多いため、雇用管理のためには職場でのコミュニケーションが重要になります。① 難病対策による難病の慢性化に伴う新たな障害 我が国では難病対策として、国の研究班による治療研究、医療費助成、さらに長期の治療を続けながらの社会参加を支援しています。「難病等による障害」はすべての事業主の障害者差別禁止と合理的配慮提供義務の対象であり、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下「障害者総合支援法」という。)やハローワーク等による職業リハビリテーションの対象でもあります。ア 難病とは 1970年代に国の難病対策が開始された時には医療費助成の対象となる難病は8疾病でしたが、その後、新たな難病が特定され診断治療も進んだ結果、令和6年4月現在、医療費助成の対象となる「指定難病」は341疾病です。また、医療費受給者数は令和3年度で約102万人であり、そのうち15歳以上65歳未満の生産年齢では53万人程度です。さらに、令和6年度からは、福祉や就労等の各種支援を円滑に利用できるようにするため、医療費受給状況によらず、難病の登録者証が発行されるため、より多くの難病患者数が把握される見込みです。 難病には全国の患者数が数万人になるパーキンソン病や潰瘍性大腸炎のような疾病だけでなく、全国の患者数が10人未満という疾病も多く、専門医以外の一般の医師や産業医にも知られていない疾病も多くあります。 平成27年施行の「難病の患者に対する医療等に関する法律」(以下「難病法」という。)では、難病を「発病の機構が明らかでなく、かつ、治療方法が確立していない希少な疾病であって、当該疾病にかかることにより長期にわ193その他の障害者

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