令和6年度版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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194たり療養を必要とすることとなるもの」としています。特に生産年齢(15歳以上65歳未満)で患者数が多い疾病としては、消化器系疾病(潰瘍性大腸炎、クローン病等)、自己免疫疾病(全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎、多発性筋炎等)、神経・筋疾病(パーキンソン病、もやもや病、多発性硬化症/視神経脊髄炎、重症筋無力症等)があります。その他、難病は患者数の少ない多様な疾病を含むものであり、血液系(原発性免疫不全症候群等)、内分泌系(下垂体機能異常症等)、視覚系(網膜色素変性症等)、循環器系(特発性拡張型心筋症等)、呼吸器系(サルコイドーシス等)、皮膚・結合組織系(神経線維腫症等)、骨・関節系(後縦靭帯骨化症等)、腎・泌尿器系(多発性嚢胞腎等)等、多種多様です。 難病の各疾病の詳細は、難病情報センター(https://www.nanbyou.or.jp/)が一般向けに提供しています。イ 難病等による障害への法制度の整備 障害者総合支援法では、難病等を「治療方法が確立しておらず、その診断に関し客観的な指標による一定の基準が定まっており、かつ、当該疾病にかかることにより長期にわたり療養を必要とすることとなるもの」としており、難病法よりも広く関節リウマチ等を含み369疾病を「難病等」としてサービスの対象としています。 障害者の雇用の促進等に関する法律においても、障害者手帳のある難病のある人が障害者雇用率制度上の障害者であることはもちろん、障害者手帳のない場合でも、難病のある人は、同法第2条における「障害者」にあたり、専門的職業紹介等の職業リハビリテーション全般や障害者雇用納付金関係助成金(障害者介助等助成金、職場適応援助者助成金)の対象であり、障害者差別禁止や合理的配慮の提供義務の対象でもあります。特に、障害者手帳の対象となっていない難病のある人を新たに雇用し配慮を行う企業向けに特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)が設けられています(Q&A【問18】(P213)にチャレンジ)。② 固定しない障害:無理なく活躍できる仕事内容と職場調整の重要性 難病等による障害の最大の特徴は、治療により症状は抑えられているものの、病気が完治していないことによる、少しの無理で体調が崩れやすいことや体調変動の起こりやすさそのものです。良くも悪くも障害が固定しておらず、医学的な重症度は同程度でも、症状が少なく仕事が問題なくできる場合もあれば、体調が悪化して退職になる場合もあり、それは仕事内容や勤務条件による場合が多いのです。ア  健康管理、通院に無理のない仕事内容や勤務条件 難病のある人にとって「無理のない仕事」とは、身体的に無理がない、休憩が比較的自由に取りやすい、疲労回復が十分にできる勤務時間や休日、通院のための業務調整が可能ということです。難病のある人は各自の体調を踏まえながらも、様々な職種や働き方での活躍を望んでいる人も多いため、「難病のある人に適さない仕事」といった固定的な見方は適切ではなく、あくまでも、個々の仕事による疲労の蓄積とその回復に必要な休憩・休日・通院等のバランスが重要です。 例えば、デスクワークならフルタイムで働けたり、立ち作業の軽作業ならパート等の短時間で休日も多ければ働けたりする一方で、同じ軽作業でもフルタイムで週5日の勤務は続けられないという場合があります。一方、運搬や労務作業、長時間の立ち作業等の体力を要する仕事、時間的拘束が厳しく休憩が取りにくい作業、頻繁なトイレや急な体調の変化に対応しにくい顧客との約束の多い仕事等、難病のある人が続けにくい場合がある仕事もあります。ただし、固定的な見方は禁物です。イ 通院や休暇等のための柔軟な業務調整 難病のある人は、最低でも数か月に1回の定期的通院が必要であったり、体調悪化時には早めに休憩や通院が必要であったりします。多くの場合、有給休暇等のスケジュール調整で十分ですが、難病の一部では現時点での医療管理の限界から体調変動が起こりやすく、実際の事例でも、突発休が年に数回でもあると、業務評価や職場の人間関係への影響が大きくなっている状況も認められます。しかし、そのような場合でも、育児中や介護中の従業員の多い職場等、突発休を前提とした引き継ぎを意識した仕事の

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