第8節 その他の障害者進め方やチーム担当制が導入されていれば、無理なく仕事を継続できる場合もあります。③ 外見から分かりにくい障害:職場のコミュニケーションの重要性 難病等の症状が悪化した場合の症状は疾病により多様ですが、体調悪化の兆し(疲れ、痛み、集中力の低下等)は疾病にかかわらず共通しています。ただし、そのような体調悪化の兆しは外見からは分かりにくく、本人や主治医から正しい情報を得ることが重要です。難病のある人が必要としている職場の理解や配慮の具体的内容を正しく理解できれば、その実施自体は、我が国の多くの職場では決して難しいことではありません。ア 先入観にとらわれない難病の最新の正しい知識 「難病」という言葉の印象や、症状悪化時の症状等の限られた情報から、「働くことが難しいのではないか」といった誤解を生じやすくなっています。症状が悪化した状況での治療や医療の課題と、症状が安定している状況で職場において理解・配慮すべき課題は異なります。 難病についての誤解や偏見は差別の原因となるだけでなく、難病のある人が差別の懸念から必要な配慮の申出が困難になる等、職場での理解や配慮のためのコミュニケーションの大きな妨げとなっています。職場においては、後述する治療と仕事の両立支援の流れに沿って、主治医から正しい情報を得たうえで、労働者本人と人事労務担当者、産業保健スタッフ、上司等との関係者間で話し合い、関係者ができるだけ納得を得られるような形で対応することが重要です。イ 体調悪化の兆しの自覚の職場で申出のしやすさ 体調悪化の兆しとして、痛みや倦怠感、疲労や発熱など症状として本人に自覚されますが、そのような症状の有無や程度は外見からは分かりにくいものです。主治医から正しい情報を得たうえで、上司等から労働者本人に声掛けを行うなど、労働者本人が体調の変化について申出をしやすくし、体調管理を確実に行える職場環境を整えることが重要です。ウ 症状のない場合でも定期的通院等が必要であることへの理解と協力 難病等は病状や体調が安定している場合であっても、完治しているわけではなく、定期的な通院で診察や検査を継続することが不可欠です。特別な検査のために別途通院が必要となる場合もあります。外見からは何も問題がないように見えることから、職場の同僚や上司に通院の必要性が理解されにくく、本人が通院しにくくなったり、職場での人間関係の悪化等の原因にもなったりします。難病のある人が健康かつ安全に働き続けるためには、定期的通院の確保が必要であることについて、必要に応じて上司や同僚に説明する等、理解や協力が得られるようにすることが重要です。エ 進行性の難病の発症初期から相談しやすい環境づくり 難病等の中には、進行性で現在の医療では進行を止めることが困難な疾病があります。在職中に進行性の難病等を発病しても、通勤や職務遂行等に影響が出る程度に症状が進行するまでには数年〜10年以上かかることが一般的です。現状では、症状がかなり進行してから職場に相談があることが多いのですが、今後、進行性の難病のある人がより早期に職場に相談しやすくし、発症初期に職場に相談があった場合、本人も職場も将来不安から過剰反応することなく、進行の見通しを確認し、現在と当分の間の対応と将来への長期的プランを分けて考えることが重要です。進行の早い時期に職場に相談があれば、長期的視点でのタイムリーな対策も可能であり、在宅勤務の導入等の検討の準備も行いやすくなります。進行に伴う設備改善等や配慮の必要性に応じて、障害者雇用関係施策の活用策についても本人と相談し、医師の意見を確認するとよいでしょう。④ 多様な身体障害等の原因疾患としての難病等 専門的に言うと、「難病等」とは医学的な診断治療の対象である疾病のことであり、一方「障害」とはそれによる生活機能(心身機能、活動、参加)の問題状況を意味します。難病等は多様な身体障害等の原因疾患となり、その一部は障害者手帳制度の対象となります。一方、「難病等による障害」には障害者手帳制度の対象となっていない生活機能の問題状況も多く含まれ、障害者手帳の有無にかかわらず職場の理解や配慮が重要です。代表的な難病で例を示します。ア 炎症性腸疾病(潰瘍性大腸炎、クローン病) 下痢や下血、腹痛で入院し診断されることが195
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