令和6年度版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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⑵ 支援制度204る障害です。いくつかのタイプがありますが、代表的なものとして、発話は流暢だが言葉の理解が上手くできないタイプと、言葉の理解は良好だが発話が上手くできないタイプがあります。 職業生活で言語を扱う場面は非常に多く、様々な場面で影響が考えられますが、コミュニケーションの取り方を工夫することで、仕事に適応できる可能性があります。 多くの場合、長く複雑な言葉や文章でやり取りするよりも、単純で短い単語や文章でやり取りした方が上手く意思疎通できます。また、なるべくゆっくり話しかけ、返答にも十分な時間を与えること、はい・いいえで答えられる質問をすることでやり取りしやすくなります。また、話し言葉よりも絵や文字を使った方が理解しやすく、話し言葉を使う際はジェスチャーを交えた方が理解しやすい場合が多いようです。キ 失認症 視覚・聴覚などの感覚そのものに異常はないのに、対象となる物が何なのかわからなくなる障害を指します。視覚失認では、見えている物が何なのか分からない、顔が認識できない、ものの位置や配置、距離が分からないなどの特性が、身体失認では触れたものが何なのか分からないなどの特性が、聴覚失認では聞いた音が何の音なのか分からないなどの特性が見られます。 失認の種類や職場環境によって問題が生じる場面が異なるため、まずは問題が生じる場面を特定し、1つ1つ対応策を検討する必要があります。基本的には、障害されていない感覚で補う方法を検討します(例えば、視覚失認がある場合は、触覚や聴覚で理解できるよう工夫する等)。ク 失行症 運動障害があるわけではないのに、動作が稚拙になる、道具が上手く使えなくなるなど、受障前はできていた行為が上手く行えなくなる障害です。職務内容や環境によって問題になることが異なるため、医療機関や就労支援機関と相談して対応を検討すると良いでしょう。できない動作にはあまりこだわらず、できることに着目した現実的な方法や職務内容を検討することが重要です。⑤ 受障後の様々な経験や環境の影響 高次脳機能障害は後天的な障害であり、受傷による急激な変化を経験します。多くの場合、この変化を受け入れることには時間とエネルギーを要することとなります。変化を受け入れていくには、本人が様々な経験をとおして自身の現状を理解していくことに加えて、周囲の人々に受け入れられているかどうかといった環境的な側面が大きく影響します。 受障時の年齢によっても事情は異なります。例えば、幼少期に受障した場合、社会人になるころには、障害と付き合いながら社会経験を積んだ期間が長くなることから、障害について自分なりに受け入れ、必要な対処法などが身についている場合もあります。一方で、障害者として生活する中でネガティブな経験を積み重ね、自信や意欲の低下を招いている可能性もあります。 社会人になってから受障した場合でも、長年のキャリアを積んだ時期に受障した場合と、入社後まもなく受障した若年層の場合では、状況が異なることが考えられます。例えば、キャリアを重ねてから受障した場合、就職(復職)の際に、これまで経験した職種(業務内容)を継続するのか、転換するのかという課題への対応が重要になります。一方、若年層の場合、積み重ねてきた職業的なスキルの積み重ねが少ないことから、受障後に新しく積み重ねなければならないところが大きく、職場適応に苦労する場合もあると考えられます。 これらは一例であり、必ず示したとおりの経過をたどるというわけではありませんが、受障前と受障後の経験が状態像に大きく影響することを理解しておくことは、本人の特性をより深く理解することに繋がります。① 障害者手帳 高次脳機能障害者は、個々の障害特性や状況、事情により、異なった種類の手帳を所持している場合があります。 まず、「行政的」な定義による高次脳機能障害に該当する場合は、精神障害者保健福祉手帳の申請ができます。ただし、申請に必要な主治医の診断書は、発症・受傷(初診)から6ヶ月以上経過してから作成することとされています。 身体障害者手帳は、失語症がある場合や、重複障害として片麻痺、視野障害などの身体障害がある場合に申請ができます。 最後に療育手帳ですが、発達期(概ね18歳まで)

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