第8節 その他の障害者⑶ 職場でできる基本的な配慮に受障しており、日常生活に支障が生じているという場合には対象になる場合があります。 なお、障害者手帳は本人の意志により申請を行うものです。本人に取得を奨める場合には、そのメリット・デメリットを丁寧に説明し、本人自ら選択できるようにする必要があります。② 医療機関・支援機関ア 医療機関 高次脳機能障害を受傷した直後は必ず医療機関にかかっていますが、継続的に通院をしているとは限りません。なお、受傷直後は外科手術が可能な医療機関にかかりますが、リハビリテーションの段階では当該施設のある機関に転院しているケースが多く見られます。また、脳血管障害等が原因の場合は、生活習慣病に係る治療を受けるため、内科等の機能のある医療機関を受診している場合もあります。医療的な知見から職場での対応について相談したい場合には、本人を通して主治医に相談してみると良いでしょう。イ 就労支援機関 地域障害者職業センターや、障害者就業・生活支援センター等の就労支援機関で、高次脳機能障害のある従業員に関する相談をすることができます。高次脳機能障害者本人がもともと利用している場合はもちろんですが、現時点では利用していない場合でも職場定着又は新規雇い入れ、復職に係る雇用管理等の相談をすることができます。ただし、本人への直接的な支援を行うには、本人の同意が必要です。 個別の障害特性に対する対応は前述しましたが、高次脳機能障害全般に共通する配慮事項もあります。① 脳疲労の影響を考慮する 脳損傷の影響により脳が疲れやすくなっている場合があります。程度は様々ですが、高次脳機能障害に広く見られる特性です。 脳が疲れると、ボーっとする、あくびが多くなる、全体的に普段より行動が遅くなる、注意力散漫になりミスが増える、いらいらした様子になるなどの問題が生じることがあります。高次脳機能障害は脳の障害ですので、脳が疲れると様々な症状に影響します。したがって、普段と比較して障害特性の影響を強く感じたときには、まず脳疲労を疑い対応を考えると良いでしょう。 基本的な対応として、疲労の原因となっている事柄を見つけ、取り除きます。例えば、仕事内容の難易度が疲れの原因になっていると考えられた場合は、休憩を入れる、違う仕事を任せるなどの対応を取ります。その他にも、周囲の雑音等の環境的な要因が疲労の原因になっている場合もありますので、その場合は可能な範囲で集中しやすい配置などを検討します。 脳疲労が普段から生じやすい場合は、休憩のタイミングや時間を検討すると良いでしょう。作業に集中していると疲れに気づかないこともあります。疲れを感じてから休むのではなく、定期的にとるよう工夫が必要です。また、休憩の取り方を工夫することで変わることもあります。休憩時間に深呼吸やストレッチをしてみる、昼休みに短時間の睡眠をとるなど試してみるのも有効な手段となり得ます。 なお、悩みや不安などから睡眠や食事が十分にとれていないといった可能性もありますので、そのような兆候を感じた場合には、本人に主治医や就労支援機関、家族等との相談を促す等の対応が必要です。② どんな工夫をすればできるかを一緒に考える 高次脳機能障害者への職場での関わり方として押さえておきたいのは、脳機能の改善を促すのではなく、どんな工夫をすればできるかを一緒に考えるということです。例えば記憶が苦手な場合に「きちんと覚えて」と促したり不注意な場合に「よく見て」と促しても、本人は障害のため対応が困難です。それよりも、手順どおりに作業をするためのメモの取り方を一緒に考えたり、確実に作業を行うための確認方法を一緒に考えたりすることが肝要です。 工夫の内容は、本人が行う工夫もあれば、周囲の者ができる工夫もあります。詳細は前述した障害特性に対する対応のとおりですが、例えば、予定を忘れずに遂行するための工夫は、本人がメモを取り参照するという方法もあれば、周囲がスケジュールを書いて渡すという方法もあります。このように、お互いにできることを見つけて工夫していくということが重要です。 また、本人1人だけでは適切な方法を見つけられない場合もありますので、周囲の者が一緒により良い方法を考える場があると効果的です。ただし、この際、あくまでも本人自身がやりたいと思う方法を205
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