令和6年度版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
210/304

b)が約3割と最も多く、次いでⅡ(日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが家庭外で多少見られるが、誰かが注意していれば自立できる:Ⅱa、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが家庭内でも多少見られるが、誰かが注意していれば自立できる:Ⅱb)が約2割でした。基本的な日常生活動作では、歩行と食事では約6割が自立していましたが、排泄、入浴、着脱衣では自立は5割以下であり、2割以上の人が全介助を必要とし、介護者の負担が大きいことが明らかになりました2)。③ 原因となる疾患アルツハイマー型認知症が最も多く、次いで、血管性認知症、前頭側頭型認知症、外傷による認知症、レビー小体型認知症/パーキンソン病による認知症となりました(図1)。以前の調査では血管性認知症が最多でした3)。アルツハイマー型認知症と血管性認知症の順位が入れ替わった要因としてはいくつか考えられますが、1)脳血管障害に対する予防啓発が進んだこと、2)アルツハイマー型認知症をはじめとする神経変性疾患による認知症の診断精度が向上したことなどが挙げられます。さらに、脳血管障害に基づく若年者の認知機能障害を認知症としてではなく、高次脳機能障害として取り扱い、そのための制度やサービスにつなげる傾向にあることも影響しているかもしれません。④ 老年期認知症との違い若年性認知症の人は老年期認知症の人と比べ、図2のように異なった特徴があります。208力、言葉をうまく使う、ものを見分けるなどの働きが障害されます。その結果、日常生活や仕事などの社会生活がうまく送れなくなります。認知症になると、新しい記憶、つまり最近の出来事が思い出せなくなります。しかし、以前のことや身についた記憶(手続き記憶)は思い出せます。また、見当識の障害により、道に迷ったり、「今日は何日?」と何回も聞いたりすることがあります。さらに、実行機能が障害されると、料理のように幾つかのことを同時に段取りよく行う作業がうまくできなくなりますが、野菜を切ったり、皿を並べたりという1つ1つのことは今まで通りにできます。職場においても、同時に複数の作業をすることは苦手になりますが、1つ1つ、順番に行うことはできます。これらの症状の現れ方は、原因疾患によっても異なり、個人差もあります。原因疾患によっては、暴言や幻覚・妄想などの認知症の行動・心理症状と言われる症状が現れることがあります。特に前頭側頭型認知症やレビー小体型認知症では、認知症の行動・心理症状(BPSD:Behavioral…and…Psychological…Symptoms…of…Dementia)が目立つとされています。認知症の原因が変性疾患(アルツハイマー病など)の場合は、いつの間にか始まって、ゆっくりと進んでいくことが多いです。症状の進み方は人によって様々です。進み方に影響する要因としては、病気の原因疾患や治療法だけでなく、周囲の病気への理解や対応の仕方など、本人を取り巻く環境も重要です。② 若年性認知症の実態若年性認知症の全国疫学調査(2020年)によると、全国の若年性認知症の人は約35,700人と推計され、人口10万人(18〜64歳)当たりの有病率は50.9人でした。老年期認知症では、年齢階級が5歳上がるごとに有病率が倍増する傾向がみられますが、若年性認知症においても40歳代以降で、このような傾向がみられました。また、性別別では男性が多く、発症時が65歳未満の人の最初の症状に気づいた年齢は54.4歳であり、働き盛りの年代での発症が多いです1)。日常生活自立度は、Ⅲ(日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが日中を中心として見られ、介護を必要とする:Ⅲa、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが夜間を中心として見られ、介護を必要とする:Ⅲレビー小体型認知症/パーキンソン病による認知症 4.2%外傷による認知症4.2%図1 若年性認知症(調査時65歳未満)の原因疾患の内訳出典:粟田主一「わが国における若年性認知症の有病率と生活実態調査」(2020)その他12.6%前頭側頭型認知症9.4%血管性認知症17.0%アルツハイマー型認知症52.6%

元のページ  ../index.html#210

このブックを見る