31Q&A【問2】人権デューデリジェンス(Due Diligence)は、企業活動における人権侵害のことである。(解答と解説はP289に記載しています)③組織は、その影響力の範囲も含めて人権を尊重する責任を負うこと、とされています。「6.4 労働慣行」では、労働慣行の概要(組織と労働慣行、労働慣行と社会的責任)が述べられています。ここでは、①組織の労働慣行には、組織内で、組織によって、または下請労働を含め組織の代理で行われる労働に関連するすべての方針および慣行が含まれる、②労働慣行には、労働者の採用および昇進、苦情対応制度、労働者の異動および配置転換、雇用の終了、訓練およびスキル開発、安全衛生、労働者組織の承認、団体交渉、社会対話などが含まれる、③社会的に責任のある労働慣行は、社会の正義と安定に必要不可欠である、と示されています。近年は企業活動における人権侵害に関わるリスク把握と発生の予防や軽減を図る人権デューデリジェンス(Due…Diligence)が以前に増して求められるようになってきています(Q&A【問2】(P31)にチャレンジ)。2020年10月に、外務省(総合外交政策局人権人道課)からビジネスと人権に関する行動計画が公表されています。これは国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」(指導原則)に基いたビジネスと人権NAP(National…Action…Plan)であり、経営活動における人権尊重について企業に対しデファクトスタンダード…(de…facto…standard…)を明示することにより企業の取組みへの方向性を示唆していると考えられます。こうした状況を踏まえて経団連は2021年12月に企業行動憲章…実行の手引き「第4章…人権の尊重」(手引き)を改訂し、「人権を尊重する経営のためのハンドブック」(ハンドブック)を作成しています。人権デューデリジェンスは当該企業にとどまらず、グローバルな企業のサプライチェーン(供給網)も含まれるとされています。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」(指導原則)に記されている内容を把握して対応を検討していく必要があるでしょう。雇用管理の面で注目される考え方であるダイバーシティ(diversity)は、一律ではないのですが、米国の雇用機会均等法委員会の「ジェンダー、人種、民族、年齢における違いのことをさす」とされています。そしてこうしたダイバーシティマネジメントの核心は…Singh,V.及びPoint,…S.(2004)13)によれば「多様な人材を組織に組み込み、パワーバランスを変革し、戦略的に組織変革を行うことである」とされています。また、ダイバーシティマネジメントの第一の目的は「組織のパフォーマンスを向上させることにある」とされています。近年はこのダイバーシティマネジメントについて、ダイバーシティ(Diversity)そしてエクイティ(Equity)とインクルージョン(Inclusion)の3つの視点(DEI)が重視されています。特にエクイティ(Equity)は、誰にでも同量のリソースを配分する、平等の意味であるエクオリティ(Equality)とは異なります。ダイバーシティマネジメントにおいてエクイティ(Equity)は、多様な背景がある個人や集団の公平性を担保するために必要な調整を行い、個人やグループの状況に合致した環境を整えることで、それぞれがパフォーマンスを発揮できると考えます。このような考え方は、障害者雇用における合理的配慮(Reasonable…accommodation)にも繋がる視点と言えましょう。そしてインクルージョン(Inclusion)は、それぞれの多様性が尊重された上で、多様な背景があるメンバーが組織に参加し、それぞれが所属する組織に貢献できる状況にあることを意味しています。世界経済フォーラム(World…Economic…Forum:WEF)は、2023年12月にインサイトレポート14)を発表し、世界各国のダイバーシティ(Diversity)そしてエクイティ(Equity)とインクルージョン(Inclusion)の3つの視点(DEI)を重視した先進的な取り組みを行っている組織の実践事例を紹介しています。日本企業では、1社の事例が紹介されています。そして、DEI…を成功に導くために共通する5つの要因は、1丁寧な根本的課題の理解、2成功のための目標の定義、3経営幹部のバックアップ(責任の担保と十分な資源の配分)、4臨機応変な設計と資源配分、5厳格な進捗管理と軌道修正だとしています。ただ、残念なことに障害についての記述は多くありませんが、アメリカやドイツ、香港の企業の事例で触れられていました。このレポートのために、世界の60の組織がコンソーシアムメンバーとなっています。日本からは複数の企業が参加しています。障害者雇用に関しては、日本においても「障害者の権利に関する条約」の批准に際し、障害者基本法の改正とその基本理念を具現化するための「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」を2013年6月に制定、労働の分野については、障害者雇用促進法が同じく6月に改正され米国においてダイバーシティの原点となった「公民権法Civil…Rights…Act…of…1964」や「障害をもつアメリカ人法…Americans…with…Disabilities…Act」の概念である「合理的配慮」の考え方が雇用管
元のページ ../index.html#33