3職場環境・条件の整備企業実習を経て採用した3名の精神障害者が在籍しており、今後の障害者の雇用の拡大にあたり、まず、障害者が働くそれぞれの受入れ部署に障害者職業生活相談員を配置することにした。受入れ部署ごとにそれぞれの障害者職業生活相談員が丁寧に情報収集を図ることにより、速やかに対応できる体制を整備した。このことは、会社が障害者雇用に前向きに取り組んでいるという姿勢が社員に伝わるメリットにもつながっている。さらに、障害者職業生活相談員の一人が企業在籍型ジョブコーチの資格を取得し、指導方法についてより専門的な見地から障害のある社員への支援を行い、さらなる能力アップや職域の拡大を図っている。また、全社的な取組として該当メンバー会議を定期的に開催し、障害者職業生活相談員、ジョブコーチを中心に、社長も含めた担当者が参加している。この会議で、障害のある社員の仕事への取組状況を報告し、課題がある場合には意見交換を行い、改善方法を検討し、部署全体へ対応方針を発信することにより、全社的な障害者の雇用の安定につながった。障害者の雇用管理、いわゆる障害に配慮した雇用管理の基本は、職業的自立を目指す障害のある従業員に対して、能力の開発・向上や、能力を発揮しやすい職場環境・条件の整備を通じて支援することです。「障害」については、個々人の機能障害だけに着目するのではなく、環境や経験・周囲のサポート体制などの条件の違いによって、その能力を発揮できる度合いや発生する困難度の大きさが異なってくると捉えることが一般的な考え方です。すなわち、障害等級が重ければ、生きていく上で、また働いていく上で困難度が高くなるという一方向で捉えるのではなく、その人のWell Beingを考えたときにどのような環境があれば障害が軽減されるのか、どのような教育・訓練により困難を乗り越えていけるのか、どのようなサポート体制があれば力を発揮しやすいのかといった視点で障害者とともに考え、「心のバリアフリー」の態勢を構築して一緒に取り組んでいくという姿勢が望まれます。また、平成28年4月より障害者に対する合理的配慮の提供が義務化されていることも踏まえる必要があります(詳細は第4章第4節参照)。障害者の職場環境・条件の整備は、ハードとソフトの両面から考えることができます。ハードの面では、建物や設備、工程、工具などの物理的職場環境の改善・整備、障害がある個々人の能力発揮を容易にする支援技術の積極的活用などがあります。ソフト面での対応では、短時間労働やテレワーク等多様な雇用・勤務形態の導入、職務配置や職務設計の工夫、教育訓練や能力開発での配慮、コミュニケーションや人間関係での配慮、賃金や労働時間など労働条件の柔軟化などがあります。また、職場における支援者の配置など、人的支援サービスの確保・管理、さらに、職場だけでなく福利厚生施設の改善、通勤や住宅に対する支援も含みます。例えば、通勤による事業所での勤務のほか、在宅勤務、サテライトオフィス勤務等があります。ICT等の活用によって障害者の在宅勤務が広がることは、通勤が困難な障害者、感覚過敏等により通常の職場での勤務が困難な障害者、地方在住の障害者等の雇用機会の拡大につながるとともに、企業にとっても人材確保の可能性を高めます。雇用保険の被保険者として取り扱われる在宅勤務者に該当するか否かは、次の点から判断されます。⑴… 業務遂行状況が直接掌握可能な事務所に所属している⑵… 他の労働者と同一の就業規則が適用されている、又は在宅勤務者用の就業規則がある⑶… 所定労働日、休日、始・終業時刻が、就業規則にあらかじめ記載されている⑷… 事業主による勤務管理が行われ、ハローワークにおいて事後確認が可能である⑸… 報酬の中に、勤務した期間又は時間により計算さ39◇◆◇障害者職業生活相談員の活躍事例◇◆◇ ~「(精神障害)ともに働く職場へ ~事例から学ぶ 精神障害者雇用のポイント」(動画)から~
元のページ ../index.html#41