チ❶から解説する時間を設けるなど実践的な講座も組み入れられました。⑤ダイバーシティの取り組み事例についてグループ各社との連携により表彰する制度を創設し、この一環として「障害者雇用の好事例」をグループ内に周知することにつなげました。⑥これらの取り組みについて経営トップの理解も格段に進み、社内報にトップのメッセージとして、「誰もがやりがいを感じられる職場づくりの推進」を紹介するに至りました。トップの考えが伝わると、各職場での好事例を掲載する等の取り組みも積極的になり、障害者雇用が様々な部署で推進され、新たな支援ノウハウや経験交流が草の根レベルで展開していきました。⑵ 現場主義の仕組み作り42❶ …企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ):企業在籍型職場適応援助者として支援を行うためには、企業在籍型職場適応援助者養成研修を受講し修了する必要があります。 …職場適応援助者養成研修については、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構のほか、厚生労働大臣が定める研修を行う民間の研修機関において実施されています。研修では、講義中心の座学研修と演習やケーススタディを中心とした実技研修を行います。研修カリキュラムには、ジョブコーチの役割、作業の方法、障害特性と職業上の課題、支援計画に関する理解、ケーススタディ、職場実習などがあります。これらの複合的な対策によって、「障害の有無に関係なく、各社員が持ちうる力を発揮できる職場を作っていくことは、自分自身を含めて社内の誰もが働きやすい職場となっていくのだ」という意識が社内に浸透し、社員間でもちょっとした気遣いが自然に行われるようになりました。この結果、明るく、健康的で、従業員エンゲージメントの高い職場づくりに繋がっていったのだと考えられます。A社では、障害者雇用を推進する中で、課題が発生したときにも職場で知恵を出し合い、一緒に対応策を考える一体感も形成されましたが、その結果、生産性の向上を図ることに繋げられたり、明るく、働きがいのある職場であるという企業風土がステークホルダーにも伝わり、先進企業として社会から高い評価を得ることができたという事例です。経営理念の浸透や人事制度の改革は、通常は本社の経営企画部門や人事部門を中心とした本社主導で行われます。しかし、障害者雇用の拡大は、それら本社部門の主導、単独の取り組みだけではなかなか進みません。それは、実際に障害者を配置する(している)部門の理解がないとすぐに限界がくるからです。前段にあるケース1のA社では、上記の取り組みの延長線上で、現場からの相談の窓口として多くの事例の蓄積をしてきた精神保健福祉士が障害者雇用施策の企画についても関わることになりました。この一環で、社員研修を企画実施し、雇用現場のマネージャーが、「採用活動をどの程度現場の考えで推進して良いか」や「労務条件の見直しを現場の考えで柔軟に対応することが可能か」といった日頃の悩みや疑問を知識として習得することに繋げられるとともに、他部署でも同じように悩んでいることを知り、相互の情報交換を図りやすい体制づくりにつなげることができました。さらに、現場サイドの質問や疑問をQ&A集にとりまとめ、雇用現場で活用できるように社内システムの掲示板に共有しました。また、相談窓口担当の精神保健福祉士はダイレクトに具体的な事例に触れることで、社内で起こっている様々な課題をリアルタイムに把握できるため、障害者雇用の対策を検討するプロジェクトの中でもより現実的な情報提供を行うことができ、障害者雇用施策にも反映されるようになっていきました。これらの取り組みの中で、本社の人事部門と現場との距離感も縮まり、本社部門と雇用現場間で情報が円滑に伝わるようになると、課題を迅速に把握でき、その対応について社内の多くの人の知恵を活かすことに繋がります。社内で障害者雇用を拡大するに当たっては、これまでの狭い経験や限られた情報に基づく偏った障害者イメージからの検討はできるだけ避け、障害者が配置される雇用現場のマネージャーや従業員の創意・工夫を引き出す仕組みをつくり、それを人事労務など本社部門がサポートしていくという組織体制を作ることがきわめて重要です。障害と一口にいっても、その内容は一人ひとり大きく異なり、また、配置される雇用現場の仕事の内容も多種多様で、さらに周囲のメンバーとの関係性も様々な状況ですから、これらの組み合わせは無数にあり、どの方策がよいかは事前になかなか予測できないものです。障害特性や基礎能力などによっては、職務への習熟スピードなどが異なることも多々あります。ましてや職場の環境・条件の改善によっては、職務遂行上の障害は軽減する可能性もあるのですから、こうした点を考慮すると、仕事に精通している職場部門のメン
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