令和6年度版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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⑶ 受け入れ環境の整備バーが障害者を交えて様々な角度から意見を出し、皆で一緒に話し合いながら、十分に考えて持ちうる能力を最大限に発揮できる態勢を整え、障害者雇用を拡大していく機会や仕組みづくりを行っていくことがより理想的だといえます。障害者の支援については百点満点の支援はありません。「今よりも少しでも良くするにはどうしたらよいか」、「以前の同じ障害の人に有効でも今回の障害者にはアレンジが必要かも」という視点で絶えず見直しをしながらよりよい対応を図っていくことが望まれます。【ケース2】B社で、製造現場を長年経験した社員が障害者雇用の担当者として異動してきたことが強みとなったという事例です。当該社員は障害者雇用について一から学びなおし、事例を元に様々な障害者の状況を理解できました。このため、障害の特性を熟知した上で現場の業務内容を調整していくことが有効だと考え、これまで切り出していた職務だけに留まらず、新たな業務開発を行っていくことにして、現場の各スタッフと交渉を始めました。さらには、精神障害者の雇用を進めていく必要性を感じたため、障害者の心理的な安全を考慮した職場環境作りに留意したところ、新たに雇用した精神障害者の雇用の安定かつ長期の就労に繋がりました。これを受けて障害者雇用促進施策の検討に際し、会社として精神障害者の採用を積極的に推進することを目指しマスタープランを策定するに至りました。このプランには、①精神障害者雇用を強みとした雇用施策を実施する、②安定的で長期的な就労を目指す、③現場をバックアップする組織を本社に整備する、④各現場に障害者職業生活相談員の有資格者を配置し、⑤企業在籍型ジョブコーチなどの専門資格の取得した社員を配属することをめざす等、現場の意見を反映した具体的かつ効果的な内容を盛り込むことにしました。さらに、当該障害者雇用担当者が、この計画を実行するためには、より広範な分野に及ぶ専門的な知見が必要であると考え、専門的なスキルを持った社員で構成する「課題発掘チーム」を本社に組織し、直接・間接的に精神障害者の雇用促進・定着に取り組む体制を構築することを提案しました。産業医精神保健福祉士企業在籍型ジョブコーチ業務遂行支援、会社への助言職業生活相談員産業カウンセラー顧問の社会保険労務士※…課題に対して「事後対応型」から「予測対応型」へと切り替えることができ、障害者とも話し合う機会が増え、長期就労を目指せる環境が整った。前段のケース2のB社では、これらの取組の結果、雇用率が向上し、プランに掲げた目的を達成することができました。さらに、職場の雰囲気が良くなり、精神障害者が長期就労するという事例が次々と発生していきました。その要因は、法定雇用率達成に的を絞らず、障害者雇用を「自社の新しい価値を創造するための経営戦略」として位置づけることで、全社的かつ継続的なバックアップ体制につなげたことだと言えます。経営戦略としたため、具体的な施策に落とし込んだマスタープランが通常の事業計画同様に策定され、各施策の達成に向けて優先的にPDCAサイクルを回し続けることになり、計画途上で生じた課題や問題に対して、会社全体から必要に応じて資源や人材のバックアップが受けられる体制が整備されました。B社の「課題発掘チーム」のような、従来の組織を超え専門性の高いチームを編成することが難しいとしても、障害者雇用に関心があり協力的な人々を支援グループ(サポーター)として障害者雇用に結びつけておくことはとても効果的です。また、B社のように、各職場に障害者雇用担当を置き、定期的に研修などスキルアップを行い、相互の情報交換や経験交流の機会を設定すると、障害者雇用の現状と取組を共有化することができ、障害者の雇用管理の不安を軽減したり、継続的に障害者雇用に関心を持ってもらうことができます。また、積極的に取り組んでいる部署の情報を社内報などで発信したり、障害者を受け入れていない部署に受け入れている部署の見学や意見交換を行うことで、障害者雇用に対する抵抗感を軽減したり、障害者雇用に係る関心を高めてもらえるなど、組織的かつ継続的な活動ができます。また、支援グループ内の意見を吸い上げることで、見逃していた課題を見いだせると共に、新たな解決方法も見つかるかもしれません。さらに、障害者雇用を支える人メンバー健康管理・安全衛生等各部署からの相談案件の情報共有専門家との連携障害者のサポート、指導員、相談員のフォロー職業生活全般の相談など障害者、管理者へのカウンセリング労働条件等の管理課題発掘チーム(例)役割43

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