図2 職務の創出に当たって分析調整が必要な事項日々の業務の流れや実施時間を把握し、調整する各業務の課題を把握する(行動分析し、課題部分を工夫する)働く環境を整備する(時間の構造化、場所の構造化、方法の構造化、手順の構造化等)疲れのコントロールに留意する(勤務日数、勤務時間、仕事内容の調整)⑵ 集中配置と分散配置社員を受け入れるときや担当業務について経験のない社員が転入してくるときの担当職務の設定を応用していただくことが適当です。一般に職場の作業環境や仕事の手順は、障害のある人が働くことを想定しないでつくられていることが多く、いろいろな障害や個性がある障害者をそのまま職務配置した場合、低能率・作業ミス・疲労といった生産管理上のさまざまな問題が発生することもあります。このため、個々の障害者の状況を加味して、障害者が最も力を発揮でき、企業側と整理できる折り合い点を探して必要な配慮を提供していくことがよりよい対応となります。ここで3つの職務創出モデルについて補足して説明します。職務の再構築を行うときには、まず、図1の左の「職務の切り出し・再構成モデル」にあるとおり、他者に手伝ってもらうことができる仕事やアシスタント的な業務を分析し、これを職場内で集めて一人分の業務を切り出します。これにより各スタッフは専門業務に集中できたり、残業時間を短縮できるというものです。忙しいときに応援のスタッフをお願いするときの仕事の切り出しの仕方と同じような取り組みになります。「特化モデル」は発達障害などのように、どうしても苦手な領域があったり、その1工程があるためにパフォーマンスが上がらないという障害者に対して、一部の工程を外して最大限のパフォーマンスを発揮することができるように設定し、当面は他者の協力を得たり、苦手な部分を別のスケジュールでトレーニングする等の対応を図る方策です。「積み上げモデル」については、精神障害や知的障害などのように、自信を持ちにくいタイプや時間をかけてスモールステップで取り組むことが適当な障害者に有効な方法で、少しずつできることを増やしていき、最後には全工程を処理できるように仕事を増やしていくという取り組みです。どこの職場でも新規採用者に取り入れているものと同様だと思います。この3つのタイプを上手に組み合わせ、障害者ごとにご本人の特性や経験、諸能力を勘案しながら職務創出していくことが大切だと考えられています。そして、職務の創出に当たっては、仕事の流れ、仕事をするときの課題点、職場環境の整備、疲労の状況という仕事面を確実に分析していくことが必要となります(図2)。なお、このときに気を付けたい点は、障害者の能力を過小評価したり、評価者側だけの視点で決めつけて能力開発に繋がらないという結果にならないように、「どうしたらできるようになるのか」「どんな支援があれば楽にできるのか」を障害者とともに、周囲の同僚のアイデアなども参考にして可能性を広げていくというスタンスが大切であるということです。また、これらの取り組みの結果、最終的に業務から外さざるを得ないと判断する際には、別の職務でトライし少なくとも2〜3以上の作業で適応の可能性を検討することが必要です。この場合、まさしく新人教育と同様に「失敗」は「経験」と考えた方がよいでしょう。すぐにあきらめないで粘り強く指導する「忍耐」も必要となります。障害者を職場に配置する際、障害者に向く職務(作業)を特定してそこに集中的に配置する場合と、広い範囲で職務(作業)の枠決めをし、本人の能力・適性に応じて通常の各部署に障害者を分散して配置するケースがあります。どちらの方法によるか、両者をどのように組み合わせるのかについては、事業主、現場責任者等の考え方によって異なります。分散配置の職場については、業種や作業工程なども関係してきますが、日常のコミュニケーションを通じて相互理解を深めるのに役立つと同時に、障害のため困難な作業を周囲の者がカバーするなど、組合せによる職業能力の有効発揮が図られています。反面で、部署間で対応に差が生じたり、各部署に障害の理解促進や支援ノウハウの提供を行うこと等同僚社員への研修機会を強化したり、障害者雇用の責任部署や障害者職業生活相談員がサポートできる体制を強化しないと社内の障害者雇用の態勢が弱体化してしまう等の課題も発生しやすい面もあります。集中配置は発展すると企業内障害者センターや特例子会社のように専任の指導者の下で障害特性に配慮しながら環境整備を図ることができる等のメリットもあ53
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