4人事評価制度の検討⑴ 目標設定と評価54ります。設備改善のための投資を効率的に実施できること、また障害者に対する雇用管理のノウハウを効率的に蓄積できるなどのメリットがあります。反面で、障害者に接する機会が少ない他の部署にしてみると、障害者雇用を自部署の取り組みと受け止められず、職務の提供が消極的になったり、障害者との関わりが薄くなってしまうというケースもあります。このため、障害者を特別扱い、あるいは差別扱いをすることにならないような配慮が必要です。障害のない人も障害者も一緒の職場で同じ作業をすることによって、お互いが理解し合い、教え合って自立し、成長していくことが大切です。ジョブ型雇用が進展する一環で正社員への目標管理と人事評価を取り入れる企業が増加しています。この流れの中で、障害者が職場に定着し、無期労働契約に切り替わる際に、身分が正社員に切り替わったり、正社員と同様に人事評価制度の対象になるという事例も増加している状況です。仕事を進めるに当たっては、障害者についても、個人の育成を図り会社業績への貢献や能力の高さを処遇に反映させる必要があることはいうまでもありません。しかし、人事評価を取り入れる企業では、全社的に活用している人事評価制度を障害者に適用すると毎回低い評価になってしまい、モチベーションを維持向上させるために人事評価を取り入れているのに逆効果になってしまう等の悩みを抱える場合が少なくありません。だからといって、人事評価を行う際に、「障害者だけを外す」「障害者用の指標を作る」ということは障害者差別になる恐れがあったり、障害程度によっては不利な評価を強いられるというケースもあり、どうしたらよいのかと各企業が悩んでいます。平成28年4月から雇用分野における障害を理由とする差別的取扱いが禁止されていることも念頭に置き、可能な限り通常の労働者と同じ方法を採りつつ、障害によって制約がある点について何らかの合理的配慮を行うことで改善ができることがないのかについて、障害者、上司、その他の職場の関係者が十分に検討する必要があります。一般の労働者に人事評価を導入する目的を整理する最近では、両者を的確に組み合わせ、障害者雇用の責任部署を中心に社内全体のプロジェクトを設置して、従業員エンゲージメントを高める取り組みに繋げているという企業が増えています。これらの企業では、集中配置で支援ノウハウを高めたり、障害者に自信を持っていただいたた上で、社内の各部署に対しては障害者を出向かせて、相互の理解促進を図ることや自然な形で障害者の支えの形を構築しています。これらの取り組みが円滑に進むと、各部署で障害者雇用を応援する社員が増えていきますし、社内に心のバリアフリーが構築され、障害者雇用の質も向上していきます。と、社員の選抜を行うためという考えよりも、労働者のモチベーションを高めるために人事評価を適用すると考えている事業主が多い状況です。そこで、従業員エンゲージメントの向上に繋げられる制度を導入できると、労働者側も「やらされ感」が少ない、よりよい評価制度になると考えられます。すなわち、労働者が、自身が担当した職務遂行結果を適正に評価され、フィードバックされ、それに見合った形で事業主から有形、無形の報酬が与えられると労働者は「満足」できますし、労働者が持ちうるパフォーマンスを最大限に発揮して与えられた仕事を的確に遂行していけるでしょう。その結果、与えられた職務に対して要求水準に適った成果を上げられ、職場に貢献していけると事業主は要求したことを「充足」できます。この満足と充足のループが相互に絡みあい、正のスパイラル(螺旋)を描いて昇華していき、この関係が継続されていくことによって労使双方が成長していくことになります。その結果として、生活の質(Well Being)の向上とキャリアアップにつながります。このスパイラルループを的確に維持していくためには、適時的に人事評価を行い、的確なフィードバックと次のステップの目標建てを行うことが必要です。国の機関では、人事評価に当たって、職務や職位ごとに定められた客観的な評価基準に照らし発揮した能力を評価する「能力評価」と個々に設定された目標に照らして上げた業績を評価する「業績評価」から構成されています。事業主が人事評価を行うに当たって、個々に目標を設定し、目標を意識して日常業務を進め
元のページ ../index.html#56