⑥ テレワークに必要な自宅内環境整備完全に仕切ったり扉を付けるのは好まれないことが多い他の床とは異なった色のカーペット材など後方の棚なども本人の仕事用の物品や私物が入る。デスク当該エリアに人の立ち入りがあると、かえって気になることがある図13 仕切りパネルの高さに関する様々なパターンオフィス用パーティション簡易吸音パネル(厚さ程度)異なった床材は、本人のエリアと本人の関係する棚の前のみに限定するデスクオフィス用パーティション簡易吸音パネル(厚さ程度)77りやすくしておくことで、自身の仕事エリアを明示しながらも、侵入されたと感じる度合を少なくできるこ近年では障害者にかぎらず、テレワークによる自宅内就労がさかんになっています。身体障害者を対象とした在宅勤務は1980年頃からありました。とはいえ大きな契機は2020年のコロナ禍以降、テレワークへの環境整備は社会的関心事となり、障害者のテレワークもそれによって大きく進展したと考えます。厚生労働省は、令和3年3月に改定された「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」においては、主に労働安全の視点から次のようなことが述べられています(概要)。・…十分な就労スペース(一人あたり10立方メートルの気積) …自宅の天井高を2.4mとすると4平方メートル程度(おおむね3畳弱)・適切な換気、温湿度環境・適切な照度の確保・身体の負担減のための机や椅子等これらは障害者の就労環境にも当然あてはまりますが、それぞれがもつ障害特性によって必要な在宅勤務をする障害者の自宅環境整備については情報機器の整備に関することや一般的なバリアフリー環境以外、在宅勤務に特化した建築的環境配慮は十分に研究された知見がありません。ともあります。とはいえ最近では、テレワークのために独立した部屋をもたない人のために、簡易仕切り(段ボール製もあり)やテント、防音機能があるボックス様のユニット等、多様な商品が市販されています。障害特性によっては、本章図11、図12に示すようなデスクまわりの軽微な仕切り、図13のように狭くともワークスペースとして独立していれば、就労中はデスクまわり以外の自宅内の様子が視線から遮断され、作業に集中しやすいことや快適性にも効果があると考えます。⑦ まとめと今後について個人のプライベートな空間を重視する傾向は、近年さらに高まっています。トイレでは、便房の仕切り壁を天井まできちんと仕切ることで、安心・安全な空間を提供しています。また男性用小便器も、隣接する小便器との間におたがいに顔が見えない程度の、従来より高めの仕切り板を設置して、利用者に安心感をもたらします。これは、発達障害などの当事者の意見によって、高速道路のサービスエリアの一部のトイレや、大学で実施されています。最近では、一般のオフィス計画においても、情報系企業、外資系企業などを中心として、従業員一人ひとりの独立性を高めたパーティション(簡易間仕切り)によって、従業員の個人空間を作り出しているところが徐々に広がっています。また職場内感染予防の観点からも、従業員一人ひとりの作業空間を仕切ることも
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