令和6年度版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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⑶ 採用面接で配慮する事項⑷ 障害(疾病)の伝え方と内容 工具や機械操作の可否、事務・作業の方法等)◦…労働条件及び合理的配慮に関する事項(希望する労働時間、執務場所の物理的環境(レイアウト、執務スペース、動線、照明や音、臭い、温度・湿度、休憩場所等)、執務場所での人的環境(人員構成、人数、他部署との関わり、電話対応、支援者や業務遂行援助者の協力の必要性等)、指導体制、通勤方法・手段や通勤時間帯、通院・医療面の配慮事項等)◦…職業に関連する日常生活、社会生活の関連事項(移動能力の確認(歩行バランス、階段・段差の昇降、移動の安全性、非常時の通勤経路の変更の可否、緊急時の電話連絡の可否等)、緊急時のサポートの必要性・避難誘導時の配慮事項、SNSの適切な利用の可否、生活リズムの確認(睡眠時間の安定、体調管理、余暇の過ごし方等)、その他の生活面の介助の状況等)採用面接の留意事項や確認事項についての基本的な考え方は「障害者だから特別に対応する」ということではありません。ただし、採用のプロセスでの障害特性を踏まえた合理的配慮に留意が必要です。採用面接の日程調整までの段階で、ご本人から配慮を求める事項を必ず確認しておき、障害の種類や程度により採用試験や面接で不利な状況が発生しないようにすることが大切です。面接での確認必須の事項では「この職場で働きたいという本人の就労意欲」は必要です。また、障害についての質問の仕方と留意点は、例えば、「職務遂行上での障害を軽減し、職場での安全配慮を的確に実施していくために障害のことをお聞きしたいと思います。障害には詳しくないので、不躾で立ち入ったこともお伺いしますが差支えのない範囲でお答えいただけると幸いです」等の前置きをした上で障害の内容について聴取することが望まれます。会社側は本人の障害については初めて知る内容ですから、率直な点を聞かせていただくことや他の障害者に対して行っている配慮を話して、すり合わせていくことも大切です。同じ障害だから同じ配慮をすればよいというものではありませんが、本人が言い出しにくい場合などもあるため、同じタイプの障害者に対応している配慮事項などを例示するなど、労使が同じ方向で相談しながら障害の軽減に取り組む姿勢があることを示すことが肝要です。なお、障害に関する情報は個人情報の中でも特に取り扱いに注意を要するセンシティブな情報になりますから、必要以上の質問は控えることが大切です。本人から就労パスポートなどの資料を提示していただくことは問題ありませんが、企業から就労パスポートの作成や参考資料などの提出を必須とすること、また、就労パスポートの提供がなされないことで不利に取扱うことなどはあってはなりません。ここでは、採用面接の際の配慮事項について、視覚障害者の事例をあげて説明します。【視覚障害者の面接の例】視覚障害者の面接に当たっては、音声によるコミュニケーションにはあまり問題はありませんが、初めての訪問では介助者をつける等の配慮が必要になることがあります。例えばエレベーターや面接会場までの案内が必要なケースや、全盲者の場合には面接室ではいすや机の位置、面接者の配置等の説明をする必要があります。面接では、視力に障害があるということを過大に考えることなく能力を正しく評価し、何ができて、何ができないのか、見え方の確認(視力・視野の程度など)、どんな就労支援機器や支援があればよいのか等を具体的に聴いて、職場環境を整備することが大切です。筆記試験をする場合には、試験用紙を拡大コピーするだけでよい人、拡大読書器や読み上げソフトを利用する人、点訳の試験問題が必要な人等、障害に即した対応が必要です。点訳が必要な場合には、点字図書館等に相談してみるとよいでしょう(Q&A【問6】(P83)にチャレンジ)。障害を伝えて、社内が障害特性などを的確に理解し、協力体制を構築することは、障害者の雇用の質の向上につながる大切な取り組みです。しかし、職場に障害を伝えることは、本人の障害や疾患に関する機微に関わるものですから、画一的に考えるものではなく、相手に応じて対策を講じながら慎重に対応していくことが求められます。81

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