⑸ 障害者の採用面接について82障害の多様化などにより、他の社員から見ると、採用した障害者がどのような障害があるのか分かりにくい事例があったり、最近では障害名や疾患名をSNS等で調べて重篤な事例や誤った情報を入手し、障害者に対して適切とはいえないような対応をしてしまうケースが発生することもあります。また、本人は人事担当者と職場の上司だけには障害のことを伝えたいが、その他の社員には障害を伏せて働きたいという方もいます。そこで、障害者を職場実習で受け入れたり、採用しようとするときには、障害の内容や配慮すべき事項について誰に、どのように、どういうタイミングで誰から伝えていくことが良いのかを整理した上で、的確に説明していくことが不可欠です。この際に、障害者本人ともよく相談し、合意形成しておくことや障害を伝えた結果、どのような受け止め方をされるか、それに対して障害者自身もどのような反応することが予想されるかといった社内に発生するハレーションとその影響についても確認・検討することが肝要です。障害を職場に伝える際の整理のポイントとしては、次の5W2Hを整理することが望まれます。① 誰に伝えるか:人事担当者に対して、直属の上司に対して、同じ職場の同僚に対して、他職場の人に対して、それぞれどのように伝えるのかを整理すること② いつ、どういうタイミングで伝えるか:実習の受け入れ時、採用決定時、問題が発生した時、職場に打ち解けて周囲との関係性が構築された段階で等により伝え方、内容を整理すること③ 何を伝えるか:疾患名を伝えるか、障害種類に留めるか、通院していること等だけを伝えるか、困り感や注意してほしいこと(例:「ため息をつくことが多くなったら注意信号なので教えてください」等)だけを伝えるかなどを整理しておくこと④ どういう場面で伝えるか:個別相談で、採用の検討をする会議で出席した人だけに、朝礼などで自己紹介する場で、障害についての研修会の場で等伝える際のシチュエーションを整理しておくこと⑤ どうして伝えようとするのか:困ったときに手助けできる体制づくりのために、周囲の見守り体制づくりや配慮のアイディアを出してもらうために、通院休暇などを申請しやすくするために、自分の障害についてよく知ってもらうことでより深い人間関係を作りたいために等障害を伝える目的を整理すること(特に障害者との共有化を図っておくことが有効)⑥ どういう形で説明するか(誰から):自分で説明資料に基づいて、人事担当者から関係社員に、外部の支援者から解説をしてもらいながらなど、誰からどのように説明するのかを整理すること⑦ どのくらいの情報量(頻度や時間)で説明するか:資料の分量や説明時間などをどのように考えるか等を整理しておくことなお、説明、周知を行う対象社員(職場の同僚等)に対しては、SNSなどで対象の障害者には発生していない障害状況や重篤な症状例のような不必要な情報や誤った情報を収集することは諫める必要があります。説明内容について分からないこと等や聞きたいことがあるときには、説明した者に相談することを徹底しておくことが大切です。また、社内の受け止め方や障害を伝えた後の反応については、企業ごと、事業所ごとに様々な状況があります。例えば、既に多様な障害者の受け入れを積極的に進めている職場では初めて受け入れる障害や疾患についても自然に受け止められるという場合もあります。一方でこれまで単一の障害種類の障害者の雇用を進めてきた企業の場合や過去に受け入れた障害者についてのトラウマがある職場などはマイナスのイメージを持っていることもあります。同じ程度、同じ障害の方でも受け止める側の対応力によって障害の伝え方を変えることが肝要です。さらに、障害を伝えた後に、社内の反応などの影響で、障害者によっては説明したことを後悔したり、「知ってもらった」という安心感から当初説明しないと決めていた状況(例えば重篤な症状が出ていた時の様子や前職での失敗など)について口を滑らせてしまい、社員の誤解に繋がる等の事態も発生することがあります。障害を伝えることにより、障害者が働きやすい環境整備を図るために、企業の担当者は、障害者と障害者を支援する支援機関との情報共有を確実に実施し、慎重にかつ、的確に進めていくことが求められます。選考・面接においては労働条件(労働時間、休日、賃金等)の確認が重要となります。採用後のトラブルを避けるため、必要に応じて支援機関の支援者、家族等の同席のうえで確認してください。
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