4障害者の配置⑴ 職務への配置84際に大事なのは実習です。特に、一般求職者と特別支援学校生徒の採用に向けての実習の流れについては、基本的には大きな違いはありませんが、支援学校の生徒の場合には教育の一環として複数回の実習を行った上で採用選考に繋げていくことが一般的です。職場実習の実施に当たっての留意点としては、・…ハローワークや支援機関としっかり事前調整を図っておくこと・…実習の内容は企業側で実際の業務内容に準じて用意すること・…期間は1〜2週間(支援学校の場合は1〜3週間)程度が一般的で、休日をはさむことが有効であること・…本人の就職の意向を確認したり、従業員から職場内での様子を確認することが必要です。【知的障害者の職場実習】知的障害者は一般的に、抽象的な言葉や概念を理解したり、計算や読み書きに障害があるとされています。職務を遂行していく面では、自分で判断して行動すること等が苦手で、仕事を覚えるのが遅い人も多いといわれています。しかし、一度覚えた仕事は正確にこなし、こつこつと取り組めるまじめさがある方が多いともいわれます。マイナス面ばかりに目を向けず、1人ひとりの特徴を正しく理解して、能力を引き出せるように職場環境や態勢を整備すれば、職場の大きな戦力となります。知的障害者を正しく理解し、態勢等を整備する職務配置は、採用した従業員の能力の活用を図るための前提となるもので、雇用管理の出発点です。障害者の個性、体力、職業能力等が担当職務に適合する場合には、当該障害者はその実力を遺憾なく発揮し、満足感・充足感をもって仕事にあたることができるでしょう。一方、配置が適切でない場合、「仕事が自分に合わない」「仕事の技能が足りない」「職場は障害者に理解がない」などの不満が生じることとなり、退職や転職の要因をつくり出す結果となります。さらに、知的障害、精神障害、発達障害などの認知面の障手段として、特別支援学校等の在校生を対象とする職場実習、職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援、障害者を試行的・段階的に雇い入れる際の障害者トライアル雇用助成金の活用等があります。これらの制度の活用によって、知的障害者は職業や職場について理解することができ、事業主側は障害の程度や体力、作業能力、性格等を正しく評価でき、障害者が持ちうる能力を発揮できるような指示の出し方、指導方法や声掛けの仕方などを習得することができるのです。【聴覚障害者の職場実習時のコミュニケーションの確認】聴覚障害者のコミュニケーションの行き違いの状況については、面接だけではなく、実際の業務遂行場面で現れてくることも多いです。そのような時には筆談を交えてコミュニケーションをとるようにします。このために面接や職場実習などの受け入れ時には、筆談用の用紙や筆記具を必ず準備しておくことが必要です。また、最近ではIT技術の発展により、会話を文字で表示できる就労支援機器を活用することも聴覚障害者とのコミュニケーションを円滑にするために有効です。なお、筆談を行う際には複雑な言い回しを避け、簡潔な文章で説明することを心がけ、面接者の言葉を相手に伝える筆記係を同席させたり、正確に伝わっているかどうか復唱してもらったり、実習場面での状況を確認するとよいでしょう。害のある方などについては、職場配置では音やにおい、気温や照明、レイアウト(執務場所)、電話対応の有無などの物理的な職場環境に加え、指導者のタイプや相性、指導方法の適合性、周囲の同僚の声掛けの仕方など人的環境の影響が大きい点を理解しておくことが必要です。職務配置には「採用時配置」と「配置後の調整」がありますが、前者の採用時配置はおおよそ次のような観点で手続きを進めます。① 人には誰しも一定の個性があり障害も個性の1つである。個性は変化することも考えられることから、適合性についてはその人の能力開発の観点から把握
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