5障害者の職業訓練⑵ 配置後の職務の適正化⑴ 障害者の職業能力開発の目標と課題する。② 適合性の判断の重要な要素である体力や職業能力は、将来のその人の能力伸張を見込んで予測しておく。③ 適合性はその人の置かれた物理的、人的な環境や条件の変化によって可変的であることを理解し、引き続きその検討を行う。④ 職務に対する興味や仕事のやり甲斐との間には、ある種の相関関係が考えられることから、職務配置の適合性についてはその人の興味や性格への配慮を行う。⑤ 障害者の中には初期緊張が強く、入職時に持ちうる能力を発揮しきれない方も少なくない。職場への慣れ、担当業務の体得、周囲のメンバーとの連携を会得すると質量両面で大きく伸張する者も多いが、この成長のスピードはかなりの個人差がある点を理解し、過度のプレッシャーや過剰なサポートを行わないように留意し、個々の適性を見極めることが大切。⑥ 適合性をめざす職務配置はあくまでも予測に基づくものであるから、配置後の調整としての「配置転換」「昇進」及び「昇格」等についてその検討を行う。配置後しばらくたっても当該障害者が期待どおりの成果をあげることができなかったり、生産(事務・販売)工程や作業方法が大幅に変わってしまい作業に適合しなくなった場合には、次のような方法で職務の適正化を図る必要があります。① 本人の能力と職務(作業)が適合しているかどうかの把握を行う。② 本人の能力に合わせて職務(作業)の内容を改善するための「職務の再設計」を行う。③ 本人の作業を容易にするための「工具、治工具、機器の改善」や「職場環境の改善」を行う。④ 本人の能力を向上させるための支援を行う。⑤ 本人の能力に向くと考えられる職務(作業)への「配置転換」を行う。職務の適正化には「昇進」や「昇格」も含まれます。障害者が、障害のない人と同等又はそれ以上に職務遂障害者の職業能力開発のためには、第一に企業が必行ができ、仕事の実績をあげている場合、現在の職位より高い職位へ配置変更することによって本人のモチベーションを高めることができます。また、仕事の難易度が同じであってもより多くの種類の仕事をこなす力を有している障害者も多いです。職務遂行面の評価はより高いスキルへのチャレンジに加え、担当できる仕事の種類を増やし幅を広げていくこと、すなわち横方向の展開を適切に評価していくこともモチベーションの向上につながります。さらに、同じ難易度、スキルの業務であっても企業の中核的な業務、ステータスの高い業務を担当することは労働者にとって、企業側から重要視されているという意識の高揚につながります。障害者の業務での具体例を次に示します。例えば、顧客データを整理してパソコン入力する仕事をしている障害者がいるときに、初心者については、関連の個人データを参照し「氏名」「生年月日」「居住地」「取引履歴」を登録する作業を担当させています。ステータスの高い者に対してこの個人情報の入力作業を担当させるときに、入力するデータ内容は「氏名」「生年月日」「居住地」「取引履歴」と同様ですが『重要顧客』として閲覧できる社員を限定しているデータを担当させるという形などが考えられます。要するにセキュリティレベルや企業側にとっての重要度で仕事を細分化して段階付けし、より重要な情報、業務の根幹に関与する立場や中心業務に就くというステータスを用意し、この点を評価の軸に加えていくことで業務の難易度を上げなくてもモチベーションに繋げていくことができる段階付けが可能になります。これらによって適切な評価を行うことにより、当該障害者が働いていた職務(職位)が空席となるため、新たに別の障害者を雇用することに繋がります。ただし、認知面の障害のある方にとっては昇格することが過度の負担に繋がり、昇格することで自信を無くしたり、処理しきれなくなるケースもありますので、障害者本人の考え方や希望、昇格後の職務イメージやサポート体制などに十分に留意して無理がない形で対応していくことも肝要です。要とする又は期待する知識・能力・態度を障害者自身が身に付けることと、第二に、障害者を取り巻く人的・物的環境、さらには企業風土を真に共生できるも85
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