令和6年度版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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⑶ 職業訓練の指導の流れ88に関係する社会資源も豊富になってきました。例えば、障害者職業能力開発校では、在職者向けの職業訓練を実施している所もあります。これらのOFF-JTは、仕事をしながらでは十分な対応ができない部分、例えば体系的な理論の習得や新しい技能の習得ができるというメリットがあります。特に新規分野、経験者が誰もいない仕事を学ぶときに効率的に学ぶことができます。また、これから職場に導入される新たな機器の使い方などは、実際に機器に触れながら学んだほうが習得が早いです。OFF-JTだと、導入前であっても、新たな機器が整備されている訓練施設に出向いて学べるというメリットがあります。さらに、施設で指導している講師は、その分野について幅広い知識を有しているだけでなく、教える技術についても長けています。よくいわれることですが、知っていることと教えることは違います。熟練技能者が優れた指導をできるとは限りません。教える技術に長けた先輩や支援員がいないときには、OFF-JTの方が効率よく短期間で知識・技能を学べるでしょう。また、OFF-JTを実施している訓練施設での交流にも大きな意義があります。技術動向を知ったり、障害者に対する新たな制度や支援機器を知ったり、役立つ情報を得ることも多々あるでしょう。同じ講習の参加者から、他社ではどのような支援を行っているのかを知る機会を得ることもできます。職業訓練は、障害者個々の技能・知識・態度の習得状況に応じて具体的にかつ段階的に行うことが必要です。ここでは、多くの所で実践しており、仕事の教え方として実績のあるTWI(Training…Within…Industry)を基本として指導の流れを紹介します。職業訓練をOJTで実施するときの参考にしてください。TWIの指導方法は、仕事を正確に、安全に、段階を追って効果的に習得させるものです。指導の流れを、「導入」「提示」「実習」「総括」の四段階に区分しています。ただし、TWIを基本にした指導方法は障害のない人を対象として開発された方法なので、各指導段階に応じて障害特性の配慮事項や注意点を盛り込んで指導することが大切です。① 第一段階 「導入」「導入」は、訓練に入り習う準備をさせる段階です。「関心を集める」→「作業名を告げる」→「これまでのこととの関連を述べる」→「その作業の重要性を述べる」→「正しい位置につかせる」というステップで展開します。【指導上の配慮】障害者の中には、新たな課題に対して極度の緊張や不安感を抱く者がいます。このように新たな課題への対応には常に緊張や不安感が伴うことを考慮し、彼らの体験や価値観を尊重した対応が必要です。正確な作業を目標にしますが、まずは本人のペースでできることを確実に習得するように指導し、緊張や不安感を取り除くようにしましょう。また、全体の把握が苦手という者に対しては、これから行う作業の全体像をより具体的に示す必要があります。例えば、完成品の見本などを視覚的に提示することが効果的です。② 第二段階「提示」「提示」は、指導者が作業を説明し模範動作を示す段階です。「主な手順を1つずつ言って聞かせ、やってみせる」→「急所を強調する、理由も述べる」→「はっきりとぬかりなく、根気よく、理解する以上に強いない」というステップで展開します。【指導上の配慮】障害者に対する作業内容の説明や指示の出し方で注意すべきことは、その内容を理解しているかどうかを確認しておくことです。それは、曖昧な状況が苦手だったり、融通がきかず杓子定規であったりするなど、配慮した話し方で説明しないと理解が難しい障害特性の人もいるからです。もし、理解していないままに指導を続けると、場合によっては指導者に対する不信につながることもあります。従って、説明や指示は、具体的にはっきりと断定的に行い、理解する能力以上に強いないように心がけることが大切です。特に、配慮した話し方は一律ではないことに注意してください。障害者本人の障害特性にあわせて1人ひとり話し方を変えましょう。③ 第三段階「実習」「実習」は、障害者に対して実際に作業をやらせてみる段階です。「やらせてみて、間違いを直す」→「やらせながら、作業を説明させる」→「もう一度やらせながら、ポイントを言わせる」というステップで展開します。【指導上の配慮】実習における指導上の基本は、マイナス面よりはプラス面を重視し、障害者本人のできる作業を確実に実行できるように得意分野を伸ばすことです。それは障

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