③ フィードバックのポイントどのような仕事でも、正確さとスピードが要求されます。この要求を目標として訓練を繰り返しますが、1回で目標をクリアできる人はいません。ミスを繰り返しながら、徐々に目標に達していきます。この時に大切なことは、ミスに対するフィードバックです。ミスの原因は何か、どうしたらミスを解消できるかという原因・対策を障害者自身が認識し、ミスを修正する行動が必要です。特に、障害特性によっては、自ら気づき修正していくことが苦手な人もいますので、フィードバックに対する指導がより重要となります。フィードバックに対する指導のポイントは、①現状把握、②原因追及、③本質追究、④対策樹立、⑤目標設定という流れで行うことです。①は自分の行動に対してどこが不十分かを気づかせます。気づかないときは、指導者がヒントを与えます。②は不十分な行動別にその原因を考えます。しかし、障害の影響により自分で原因を見出すことが苦手な人が少なくありません。その時は指導者が一緒に考えて原因を導いていきます。③は不十分な行動の中で何が一番の課題なのかを追究します。④は不十分な行動別にどのような対策が有効なのかを考えます。この時も指導者が一緒になって考え、障害特性を考慮した最も良い対策を検討します。⑤は対策のうちで重点項目を絞り、次の目標とします。なお、ミスに対するフィードバックは、ただ考えるだけではなく、実際に作業を繰り返してみることが大切です。④ 障害状況に応じた指導のポイント一般的に、技能や技術は教えられて覚えるのではなく、見よう見まねで覚えるものといわれています。一般論としてはそれでよいかもしれませんが、障害者の場合は一概にそうとも言えません。障害によっては、うまく見えない人もいるし、また、たとえ見えたとしても、麻痺などのためにまったくちがった身体(からだ)の動きになることもあります。しかも、自分の見え方や身体の動き方を感覚的に把握することに課題がある障害者は少なくありません。こうしたことから、障害者には見よう見まねの前の段階の指導、つまり、障害状況に応じた指導が必要なのです。障害状況に応じた指導とは、障害による作業の制限を障害者本人の立場から見極めて、指導者が改善策を発見することです。そのためには、作業におけるさま90とんど意図が伝わらないことがよくあるので、言葉を選んで話をする必要があります。言葉で示す方法は、最も多くとられる方法なので、指導者は障害者1人ひとりにあわせた配慮した話し方を最優先で習得しましょう。また、指導者の指示に従わなかったときに起こしがちな怒った顔や声の調子などはマイナスの影響を強く与えてしまいます。「こんなこともできないのか!」という見方や考え方は、指導の過程では指導者の頭の中から取り除くことが大切です。イ ジェスチャーで示す方法「ここを押す」「あちらを向く」など指導者が手で指示したり、身体全体で指示する方法です。その際、あいまいなジェスチャーを避ける、速すぎない、一度に多くのことを同時に示さないなどを心がけるのがポイントです。ウ 見本を示す方法訓練で行う作業の全部又は一部を実際にやってみせて、障害者がそれを見本にして作業させる方法です。障害のあるなしに関わらず、実際の作業をみせたほうが理解しやすいです。もし、障害者本人が、周囲の人の行動をマネするのが上手な場合は、特に効果的です。エ 身体的に支える方法正しく行動できるよう指導者が障害者本人の身体に直接触れながら物理的な手助けをする方法です。ただし、障害特性によっては、指導者がやわらかい力で触れても障害者本人が痛みを過敏に感じたり、身体を触れられることを嫌悪する人もいますので、細心の注意が必要です。また、このような障害特性がなくても、体に触れる前には必ず声を掛けることを心がけましょう。オ 要点を強調する方法教える要点を際だたせるために工夫する方法です。重要な部分は、大きく書いてみせる、声を大きくする、図で示しながら説明する、目印をつける、動画や実物を見せるなど注意を引きつけるように心がけましょう。カ 教材・補助具を使用する方法仕事や行動の見本を模型、道具、図版や表などを利用して理解しやすくする方法です。親近感をもたせ、注意力、正確さなどを伸ばすときに効果があります。障害者に合わせてオリジナルの教材を開発することもあります。
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