令和6年度版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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ります。目の前の障害者本人をよく観察し、そしてどのような話し方だと意思疎通できるのかを話し合って、配慮した話し方を決めることが大切です。② 理解しやすい話し方障害のあるなしとは関係なく、指導者は以下の事を守って話す必要があります。これは理解しやすい話し方の基本中の基本です。・聞き取りやすい適切な速度で話す。・全員が聞き取れる声量で話す。・…「えっと」や咳払いなど、話と無関係な感嘆符や音を抑えて話す。・…板書しながら話さない。板書を終えた後に障害者本人を見て話す。さらに理解しやすくする話し方のポイントを紹介します。まず最初に、理解しやすい話し方をするためには、指導者は一方的に話し続けてはいけません。指導者は話の節々で障害者本人の反応を確認しながら、話を続けましょう。この反応の確認方法は、障害者本人の観察で構いません。指導者は話にあわせてうなずいているかどうかを観察します。また、時々障害者本人に質問してみて、話を理解していたかどうかを確認するのもよいでしょう。もし、集合訓練で指導していて、指導者が理解しやすい話し方をしているのなら、多数の障害者がうなずいたり、指導者の方を向いて熱心に話を聞いているかどうかを判断基準にします(Q&A【問7】(P93)にチャレンジ)。ところで、うなずいていなかったり首をかしげている障害者が多数を占めているときは、指導者は理解が難しい話し方をしている可能性が高いです。このような場合、障害特性による影響以外で考えられる原因には、次のようなものがあります。・…指導者が障害者本人の知らない専門用語を使って話している。・…指導者が話している状況や場面について、障害者本人は経験がなく想像できない。・…話の前提となっている背景や状況について、障害者本人は理解していない。・…指導者が話す順序が時系列に沿っていない。すなわち、これらの原因を排除することで、指導者は理解しやすい話し方ができます。まず、障害者本人が専門用語を知っているかどうかや、状況や場面の経験があるかどうかについては、障92がよいです。例えば、発達障害者とのコミュニケーションにおいて、こういうことが起きなかったでしょうか?指導者…「この書類は申請を行うのに必要な書類です。明日の申請に間に合うように忘れずに持ってきてください。」本 人「わかりました。必ず持ってきます。」 《明日になって》指導者…「昨日言っていた申請書類を持ってきましたか?」本 人「はい、ここにあります。どうぞ。」指導者「何も記入していませんよ!どうして!」本 人「え!!」 これは、障害者本人に「暗黙の了解(お互いに常識的にわかるので言葉から省略している部分)が読み取れない」という障害特性があるのを失念して、指導者が配慮した話し方をせずに指示を出したことでトラブルが発生しました。もし、配慮した話し方をしていたら防止できたトラブルです。よくみると、指導者の指示では「申請に間に合うように持ってくる」としか喋っていません。書類の必要事項を記入することを伝えていません。なぜなら、常識的に「申請に間に合うように」から「必要事項を記入済みにする」という意図が伝わるので、喋らなくても相手に伝わるものと無意識に判断して、暗黙の了解にしてしまったのです。しかし、暗黙の了解を読み取ることができない障害者本人には伝わりませんので、必要事項を記入しません。けれども、言葉として指示のあった「間に合うように持ってくる」は守っています。ですから、必要事項を記入していない障害者本人を責めるのは間違っています。指示通り行動しているからです。暗黙の了解を読み取れないのは障害特性なので、簡単には改善しません。障害者本人に合わせた配慮した話し方を指導者がする必要があります。また、コミュニケーションに課題のあることが多い発達障害以外であっても、配慮した話し方は必要となります。一般的には、視覚障害者であれば、「あれ」「それ」といった指示代名詞を使わずに具体的に示しながら話します。聴覚障害者であれば、音の情報から得る状況判断が困難なので、周囲の状況を含めた説明を含めながら話します。精神障害者であれば、プレッシャーや誤解を与えないように話します。発達障害者であれば、曖昧な表現や暗黙の了解を使わずに話します。ただし、何に配慮して話すのかは、1人ひとり異な

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