令和6年度版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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⑹ テレワークにむけての職業訓練93Q&A【問7】障害者が理解しやすい説明にするために、指導者はあえて一方的に話し続けたほうがよい。(解答と解説はP289に記載しています)害者本人の持っている知識や経験から確認できます。日常のコミュニケーションで把握しましょう。また、話の前提となっている背景や状況については、指導者が当たり前と感じているために、うっかり障害者本人に説明することを忘れてしまうことが多いです。指導者がベテランであればあるほど、無意識のうちに説明を省略してしまう傾向があるので、注意が必要です。そのため、意識的に基本的な部分の説明も話の内容に盛り込んでおきましょう。ここで、理解しにくい話し方と理解しやすい話し方の例を紹介します。なお、障害者本人はインターネット技術を習得するために訓練を受講しているという設定です。ただし、訓練開始直後なので、障害者本人はインターネット技術の基礎的な知識は持っていません。次の例は、障害者本人の知識の範囲内から大きく外れ、背景や状況の説明が省かれた、理解しにくい話し方になっています。おそらく、この本を読んでいる多くの方も理解が難しいでしょう。なお、網かけの部分が障害者本人の知識の範囲内から大きく外れた箇所です。【理解しにくい話し方の例】インターネットはTCP/IPによって接続されているから、これを知っておくことはとても重要です。例えば皆さんは、ネットワークに輻輳(ふくそう)が発生して困ってしまうことがよくありますよね。これは、セグメントの分け方に問題があるかもしれません。この授業で習った知識を用いて、快適なインターネット環境を構築しましょう。もし、専門的な知識と経験を持っている人なら、この話は容易に理解できます。指導者は専門的な知識と経験を持っているので、無意識のうちに、前述のような話し方をしてしまったのです。次の例は、前述の【理解しにくい話し方の例】とまったく同じ内容を話しています。ただし、障害者本人の知識の範囲を考慮して専門的な部分の言葉を変えています。さらに、説明を省いている背景や状況も追加しています。網かけの部分が言葉を変えたり、話を追加した箇所です。【理解しやすい話し方の例】インターネットは、全世界の各種機器が利用できるように、TCP/IPと呼ばれる統一された技術仕様とルールによって接続されているから、これを知っておくことはとても重要です。例えば皆さんは、ネットワークがとても重たくなって困ってしまうことがよくありますよね。頻繁に重たくなるときには、そもそもネットワークの設計に問題があるかもしれません。TCP/IPを知ることで、どのようにネットワークを設計したらよいのかがわかります。この授業で習った知識を用いて、快適なインターネット環境を構築しましょう。この例のように、無意識のうちに障害者本人がまだ覚えていない専門用語を使ったり、背景や状況を省略することはよくあることです。そのため、専門知識や説明の省略をしても障害者本人が理解できるレベルはどこなのかを、指導者は常に把握する必要があります。そして、専門用語を別の簡易な言葉に置き換えたり、背景や状況の説明を追加したりしてください。もし、置き換えや追加説明が難しいのであれば、図や動画といった補助資料を事前に用意してもよいでしょう。さらに気を付ける話し方としては、話す順序が時系列と沿っていないと、障害者本人が混乱をきたす恐れがあります。そのため、指導者は思いついた順番で話すのではなく、作業手順などを参考にしながら、時系列を意識して話しましょう。もちろん、他の原因で指導者が障害者本人に理解しにくい話をしていることもあります。いずれにしても、指導者は障害者本人の反応から話を理解していたかどうかを察知して、理解していないようなら原因を探って改善することが大切です。これまでも、通勤が困難な障害者や、自宅やサテライトオフィスの方が能力を発揮できる障害者のために、在宅雇用で在宅勤務を行うことができました。ですが、環境面・制度面の整備や雇用管理等のハードルが高く、少しずつしか普及しませんでした。しかし、新型コロナウィルス感染防止対策のひとつとして、情報通信技術を活用した在宅勤務(以下「テレワーク」という。)が注目されました。そして、テレワークに必要な技術が一気に進歩し、企業もテレワークに必要な制度や機器の整備を積極的に行いました。これにより障害者の在宅勤務も、テレワークならハードルも低くなり、障害者も企業もテレワークに前向きに考えるようになっています。特に、テレワークで働いている障害者からは、通勤の負担軽減と体調に合わせて働けることにメリットを感じている人が多いです。障害のために通勤ができなかったり、体調が安定しなかったりすることで、求職

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