令和6年度版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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⑵ 受け入れ後の教育訓練の実施5第1職場適応を高めるための対策⑴ 職場適応を高めるための方策節障害者の配置や配置転換、昇進や昇格によって職場にうまく適応しているかどうかについては、企業側と働いている障害者側の双方からみることが重要です。また、家族や支援者など社外の支援体制からの働きかけや友人、知人の関わりによっても左右されやすいといえます。企業側が「うまく職場適応している」と判断していたとしても、障害者側からみると労働条件に不満をもっていたり、人間関係に悩んでいたりすることが案外多いものです。また、認知面で障害のある人にとっては、周囲の人的環境に左右されることも多く、指導者の変更や同僚の異動などによって影響を受けたり、家族や知人からマイナスイメージが伝えられると後ろ向きの発言が出たり、消極的な気持ちが出てしまうことも少なからず発生します。職場適応がうまくいっている状態とは、企業側にとっては障害者が能力を十分に発揮して安定して働き、会社にとって戦力となって充足している状態であり、働く人にとっては仕事にやりがいがあり、職業生活が満足できるものである状態をいいます。この充足と満足の螺旋階段を継続的に登っていくことにより、職業生活は充実し、Well…Beingに繋がり、会社にとってもなくてはならない人材になり、労使双方の成長に繋がっていきます。したがって、職場適応を高めるために企業に求められることは、障害者雇用の質を高めていくことであり、募集、採用、配置等のほか、人間関係、安全・衛生管理、その他雇用管理全般にわたって障害者の個性や特性を把握して、社外の支援機関と連携して、これらの諸要件に配慮した対応を積極的に進めていくことといえます。令和4年12月に改正された障害者雇用促進法においては、適当な雇用の場の提供や適切な雇用管理等の実施に加え、雇用する障害者について職業能力の開発及び向上に関する措置を行うように努めなければならないことを追加し、キャリア形成の支援を含め、適正な雇用管理をより一層積極的に行うよう求めることが盛り込まれています。障害者の職場適応をめぐる問題はさまざまですが、企業としてはまず、1人ひとりの障害者が何を考え、何を望んでいるか、職場においてどんな問題に直面しているか、社外の支援体制がどのような関わりをして障害者を支えているのかといった点を把握することが大切です。定期的な面談等を通じて、現在の状況のみならず、障害者の特性を踏まえ、今後どう働いていきたいのか等障害者本人の希望等を十分に聴取するとともに、職務遂行状況や習熟状況等を評価し、必要な業務の分担や配置の見直し、スキルアップや職域の拡大に向けた職業訓練機会の提供を計画的かつ積極的に行って下さい。次頁の表1は職場適応を高めるための具体的な対策のポイントです。障害者の活躍促進のためには、障害特性や職務の遂行状況、その能力等を踏まえながら、課題改善に取り組むため、教育訓練を実施することも望まれます。特に認知面での障害がある精神障害者や知的障害者等については、習得に時間を要するケースも多く、スモールステップで長い目で焦らずに教育訓練を行っていくことや職場環境や職務内容に慣れるまでに多くの時間を要することがある点に配慮して十分な教育訓練の期間を設けることも必要です。さらに、技術革新等による職務内容の変化への対応や加齢等の影響から様々な課題が生じている障害者への対応など、受け入れた後も必要に応じた能力向上や能力再開発のための教育訓練、担当できる業務の幅を広げるための未経験領域の業務に係る教育訓練を行うことも必要です。また、社内に統一的に実施している社員研修については受講の機会を設けることが不可欠です。ただし、この際に障害によっては研修資料や研修内容の理解に苦慮するケースもありますので、研修実施に当たっての合理的配慮について障害者本人とも相談して、的確に対応いただくことが必要です。95職場適応、職場定着の推進

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