令和6年度版障害者職業生活相談員資格認定講習テキスト
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2障害者の職場定着のための組織的な対応96対策のポイント① 人間関係の改善② 職場の安全管理③ 健 康 管 理④ 労働時間管理⑤ 賃金等の処遇⑥ 教 育 訓 練⑦ 社外の支援体制  との連携状況障害者の職場適応等の課題については、特定の採用・人事担当者や配属先の上長だけが対応するのではなく、事業所が組織的に取り組むことが重要です。このためには、幹部会議、○○委員会等、社内の既存の組織を活用することが考えられますが、このほか職場での関係者によるチーム(障害者職場定着推進チーム)を設置する方法があります。障害者職場定着推進チームのメンバーとして想定されるのは、事業主又は事業所の長、現場の作業指導員、人事担当の課長及び関係課長、障害者の代表、障害者職業生活相談員、その他職場の代表などです。可能であれば事業所の産業医や保健師にも参加してもらい、内部障害者や精神障害者等の通院治療やその他の医療的専門分野の助言、人間関係等のカウンセリング及び職場環境にかかわる安全・衛生面の指導をしてもらうと、なおよいでしょう。チームの活動内容は次のとおりです。活動時期については定例的な会合を設けるのが一般的ですが、事業所の安全・衛生委員会等と併合して運営しても差し支a)職場単位での障害特性等の事前啓発b)上司との定期的情報交換による、問題解決の具体的方策の検討c)個人やグループの話合いによる、仕事を通じた人間関係の深化d)仕事以外の場面での話合いや懇談の促進e)指導者の変更、同僚の異動による環境変化の確認a)労働災害の防止b)安全管理責任体制の確立c)作業環境と施設設備の改善による作業の安全化d)安全教育の徹底e)非常事態の対策(災害発生時の避難・誘導を含む)a)障害特性や医学的な制約に即した健康管理b)休憩や早退、年次有給休暇等を取りやすい雰囲気づくりa)障害を進行させないための配慮b)障害特性に応じた勤務時間や交替制の制限a)同一労働同一賃金の原則b)職務(作業)の評価に裏付けされた賃金の支給a)長期的な人材育成の視点に基づく教育訓練b)障害のない人と同一の研修受講への配慮c)伝達と理解を促進する方法についての配慮d)ノウハウの全社的な蓄積・共有と水平的な活用e)障害特性に応じた個別的なOJTa)家族の支えの体制と連携状況b)支援機関の支援体制と連携状況c)社会生活の安定、余暇活動の状況d)医療ケアの継続状況、医療機関との連携状況e)日常生活面の課題表1 職場適応を高めるための対策のポイント雇用管理面の配慮えありません。① 職場における作業意欲・問題点の把握と援助、自信形成のための励まし② 職場内の人間関係等職場生活についての援助③ 障害者雇用についての事業所内啓発活動④ 労働環境の検討⑤ 職場配置、教育・訓練方法の検討また、職場内で障害者が働きやすくなるように、職場全体を巻き込んで取り組んでいくことも有効なケースが多いものです。職場で障害者がトラブルを起こしたり、仕事をうまく処理できないときなどに、一番よくない対応の仕方は「障害のせい」「障害者のせい」にしてしまい、本人をトレーニングすることしか考えなかったり、「仕方ない」とあきらめてしまうことで、そのような対処では課題の改善につながりません。個人を責めるのではなく、「仕組みを改善する」「周囲の人を巻き込んで皆で考える」という考え方で取り組むと活路を見出せることも多いものです。

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