エッセイ 強迫性障害の私が、自分らしく働けるようになるまで 第4回 好きなことを仕事にした 漫画家・イラストレーター つくし ゆか 看護専門学校卒業後、大分県や福岡県の医療・介護現場で看護師として勤務。2019(令和元)年に結婚を機に鹿児島県へ移住。自身の強迫性障害の体験をもとに漫画制作を開始し、2022年に燦燦舎より『極度の心配性で苦しむ私は、強迫性障害でした!!』、2025年にラグーナ出版より『強迫性障害とともに生きてみた。〜不安が軽くなる30のヒント〜』を出版。現在は県内で講演活動も行っている。 好きだったことを思い出すまで  私は子どものころから、絵を描くことが大好きでした。好きな漫画の登場人物をまねして描いたり、自分なりのストーリーを考えたりする時間が、とても楽しかったのを覚えています。  けれど大人になってからは、強迫性障害の症状にふり回される日々が続き、絵を描く余裕などありませんでした。目の前の生活をこなすことで精一杯で、「好きなこと」を楽しむ感覚をいつの間にか忘れていたのです。 「やってみたい」と思えたきっかけ  そんななか、ある同人イベントに足を運んだことが、一つのきっかけになりました。そこでいまの夫と出会い、好きな漫画を思いきり描き、それをたくさんの人に見てもらっている姿を目にしました。  その光景を見たとき、「うらやましい」と強く思いました。そして、「自分も本当に好きなことをやってみたい」と思ったのです。 自分の経験を描いてみた  何を描けばいいのか迷いはありませんでした。私には、これまで経験してきた強迫性障害のことがありました。自分が感じてきたこと、考えていたことを、そのまま漫画に描いてみようと思ったのです。  そうして描いた漫画を、SNSに投稿してみました。  すると、「私も同じ病気です」、「家族が同じ症状で悩んでいます」、「目に見えない病気だけど、こんなふうに感じているんですね」など、少しずつ声が届くようになりました。  自分が描いたものが、だれかの心に届いている。そのことが、とてもうれしく感じられました。なかには、「病院に行くきっかけになりました」といってくださる方もいて、「描いてよかった」と心から思えた瞬間でした。 はじめて感じた達成感  これまで私は、「看護師として働くこと」があたり前だと思ってきました。でもはじめて、「自分が好きなこと」でだれかの役に立てたように感じられ、大きな達成感を得ることができました。 まだ知られていないという現実  強迫性障害は、まだ広く知られているとはいえない病気です。  決して珍しいものではないのに、知られていないがゆえに、理解を得られず、ひとりで抱え込んでしまう人も少なくありません。  私自身もこれまで、心を許せる人にしか病気のことを話してきませんでした。ただ「やめなよ」というのではなく、「どうしてやめられないのか」、「どうしたら楽になるのか」と、一緒に考えてくれる人。手洗いで荒れてしまった手を見て、「大丈夫?」と気にかけてくれる人。そうした存在に、どれだけ救われてきたかわかりません。  心の病気は、「やめさせよう」とすることでよくなるものではありません。ただ、理解しようとしてくれること、寄り添おうとしてくれること。それだけで、少し心が軽くなることがあります。 伝えることを仕事に  2022(令和4)年に燦燦舎(さんさんしゃ)から『極度の心配性で苦しむ私は、強迫性障害でした!!』、2025年にラグーナ出版から『強迫性障害とともに生きてみた。〜不安が軽くなる30のヒント〜』を出版することができました。それをきっかけに、学校や施設などで講演をさせていただく機会も増えました。  私は、自分の漫画を、同じように苦しんでいる方だけでなく、そのご家族や、職場で関わる方々にも読んでもらいたいと思っています。どこにでもいる「普通に働いている人」のなかにも、見えない苦しさを抱えている人がいる。そのことを、少しでも知ってもらえたらうれしいです。 のびのびと働けるいま  そしていまは、漫画やイラストの仕事にもたずさわるようになりました。以前は感じることの少なかった「楽しい」という気持ちや、「自分のやっていることに意味がある」と思える感覚を、少しずつ取り戻しています。