ミニコラム 第60回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は前原委員が執筆しています。ご一読ください。 だれもが不安なく働ける「あたりまえの環境」 筑波大学人間系教授 前原和明  今回の国立大学法人筑波大学ヒューマンエンパワーメント推進局(以下、「筑波大学BHE」)の取材は、これからの障害者雇用のあり方、ひいては「人が働く環境」そのものを根底からみつめ直す貴重な機会となった。  これまで私たちは、障害者雇用を語る際、「障害のある人」と「健常者」を無意識に分け、いかに特別な配慮や支援を提供するかという視点に偏りがちだったように思われる。しかし、筑波大学BHEが実践しているのは、障害や診断の有無にかかわらず、だれもが持つ特性や苦手さに目を向け、すべての人が能力を最大限に発揮できる「人のエンパワーメント」を目ざすという、より本質的なアプローチである。特に印象に残ったのは、エンパワーメントを個人の適応努力に帰結させず、自ら気づき、試行錯誤できる環境や仕組みづくりに注力している点だ。  そして、それを単なる他律的・義務的な制度として終わらせず、組織を構成する全員で共有する「文化」へと時間をかけて昇華させようとする姿勢に、共生社会の形を感じることができた。障害の有無を超えて、だれもが不安なく力を発揮できる「あたりまえの環境」を組織全体で整えること。  それこそが、雇用の質を高め、結果として企業そのものを強く、柔軟なものへと変革していくのだと考えられた。