職場ルポ 家電リサイクル工場で一緒に働き、地域を支える アクトビーリサイクリング株式会社(熊本県) エコタウン事業を進める地域の産業団地の工場では、障がいのある人も一緒になって家電リサイクルに取り組み、地域活性化にもつなげている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ アクトビーリサイクリング株式会社 〒867-0067 熊本県水俣市(みなまたし)塩浜町(しおはまちょう)278-6 TEL 0966-62-3300 FAX 0966-62-3338 Keyword:リサイクル業、知的障害、精神障害、障害者職業生活相談員、作業体験実習、地域貢献 POINT 1 地域貢献活動の一環として、「障害福祉サービス」事業所に施設外作業を提供 2 手作業の多いパソコン解体を中心に、作業体験実習の場を提供 3 通常の障がい者雇用も行い、特性などに合わせた工場内の配置も 家電リサイクルの拠点  2026(令和8)年5月、「公害の原点」ともいわれる水俣病の公式確認から70年を迎えた。これまで水俣市は、痛ましい産業公害の舞台となった負の経験から「環境を汚さない、地球環境に負荷を与えない」ことを目ざし、市民とともにさまざまな取組みを行ってきた。2001(平成13)年には、環境保全への努力を産業創出や地域経済の活性化などにつなげる国のエコタウン事業として「みなまたエコタウンプラン」が承認を受けた。  同プランの中核事業が、工場跡地の約20ヘクタールを整備した水俣産業団地「総合リサイクルセンター」だ。現在は11の企業と団体が入り、家電やプラスチック、ガラス瓶、油、建築材などのリサイクル事業を展開している。  その一角にある「アクトビーリサイクリング株式会社」(以下、「アクトビーリサイクリング」)は1999年に設立され、2001年4月の家電リサイクル法施行と同時に水俣工場の操業を開始した。大手家電メーカー各社も株主となっており、福岡県以外の九州各地からテレビや洗濯機、冷蔵庫、エアコンなどの使用ずみ家電製品の受け入れ、解体、有用資源の回収などを行っている。2025年には新たに宇城市(うきし)松橋町(まつばせまち)で熊本工場も稼働。水俣工場から発生した家電由来のプラスチック・非鉄金属類を破砕・選別する作業を行っているそうだ。  アクトビーリサイクリングは、当初から地域の「障害福祉サービス」事業所などに作業体験実習の場を提供し、障がい者雇用にもつなげてきた。いまでは全従業員147人のうち障がいのある従業員は6人(身体障がい3人、精神障がい3人)。「障害者雇用率」は4.14%(2026年4月1日現在)という。2019年に熊本県(共催:JEED)の「障がい者雇用優良事業所」知事表彰受賞、2024年には県内6番目となる、もにす認定企業(※1)に認定されている。今回は水俣工場で働くみなさんの様子とともに、これまでの取組みについて紹介したい。 産業団地内に作業所  アクトビーリサイクリングの水俣工場の建物は5000uに及び、うち半分が解体工程、残りが破砕・選別工程として使われているそうだ。総務部門福祉リサイクル課課長の村元(むらもと)優介(ゆうすけ)さんが案内してくれた。  もっとも多くの従業員がかかわっているのは、洗濯機やテレビ、エアコンの解体現場だ。それぞれ専用のラインに沿って、流れ作業で解体されていく工程をみせてもらった。  「部品の解体で、人の手により回収できる部品・資源は、ネジを回して一つひとつ部品を取り外し、残りは破砕・選別することにより各資源に戻しています」と村元さん。その様子は、まるで製品をつくりあげる工程を、さかのぼっているようだった。家電リサイクルというのは、予想以上に手間暇がかかっていることが、本当によくわかる。  工場建屋外にある屋根つきの場所では、エアコンのフロンガス回収作業が行われており、ここでも人の手で1台ずつ処理されていた。解体後は、破砕機やさまざまな選別機械を経て鉄や銅のチップ、貴金属が混じった基板、RPF(固形燃料)など、再び資源として活用できる状態にするそうだ。  敷地内にある建屋の一つでは、パソコン機器の解体が行われていた。作業しているのは、水俣市内にある2カ所の就労継続支援B型事業所に通う利用者のみなさんだ。  作業台を囲むようにして立ち、吊り下げ式のエアードライバーを手にパソコンを解体し、バラバラになった部品を、背後に並ぶ分別容器に入れていく。村元さんによると「吊り下げ式のドライバーは身体的な負担が小さく、分別容器は部品の写真を掲示してひと目でわかるようにしました。作業台は、角などでけがをしないようゴム製の外枠をつけています」とのことだ。  部品はプラスチックをはじめ鉄類、基板など計10種類に分別しなければならないという。村元さんは「ノートパソコンのほかデスクトップパソコンやモニター、サーバーなども扱っていて、物によっては10種類以上の分別が必要です。なお記憶媒体については、一部の社員しか入室できないセキュリティールームで記憶媒体の管理・データ消去業務を行います」と説明してくれた。  「障害福祉サービス」事業所との連携は、もともと2003年、水俣市内のNPO法人環境と福祉を結ぶ会が運営する「グループ・エコ」が、家電の基板ユニットの仕分けを福祉との協同作業として始め、現在も継続して行われており、10人ほどの利用者がかかわっている。  その後2009年、アクトビーリサイクリングはパソコン解体用の建屋を開設したことから、新たに作業体験実習を「わくワークみなまた」(以下、「わくワーク」)に呼びかけた。  ここは福祉と環境保全への取組みを融合させた新たなモデル事業所として2005年、総合リサイクルセンター内に開設された。運営しているのは、水俣市が開設した水俣病認定患者のための療養施設を受託経営している社会福祉法人水俣市社会福祉事業団。わくワークでは、使用ずみペットボトルのリサイクル事業のほか、近隣企業と連携して施設内外の受託作業も行っている。  パソコンの受入れ件数が増えていくのにあわせ、さらに社会福祉法人親和会の運営する「障害者支援センター水俣福祉作業所」も加わり、現在は2事業所から多いときは利用者12人と支援員2人が来て、1日あたり100台ほどのパソコンを解体する。  作業スピードなどは個人差もあるが、「目標台数などは、まったく設定していません」と村元さん。わからないことなどがあれば、ほかの従業員がフォローしながら、楽しく訓練できるような環境づくりに力を入れているという。村元さんが説明する。  「あくまで一人ひとりの就労に向けた訓練、スキルアップの場として役立ててもらいたいと思っています。こうした場は当初から、地元企業として地域に貢献していくための活動の一環です。少しでも就労移行支援のお手伝いができればと積極的に進めてきました」  実際、ここでの作業体験実習を経て、ほかの一般企業に就職した利用者が何人もいるとのことだ。 作業体験実習を経て採用 パソコン解体の作業体験実習を経て、アクトビーリサイクリングに従業員として採用された人もいる。  総務部門福祉リサイクル課の緒方(おがた)栄二(えいじ)さん(42歳)は、もともと県外で働いていたが、20代後半に慢性腎不全と診断されたことから、退職して実家のある水俣市に戻ってきた。週3回の透析をしながら、再就職を視野に入れて、わくワークに通い始めた。間もなくアクトビーリサイクリングでのパソコン解体作業が自分に合っていると感じた緒方さんは「ここで従業員として働きたい」と思うようになったそうだ。相談を受けた支援員が、村元さんたちに相談しハローワーク経由で求人に応募、3カ月間のトライアル雇用を経て2017年に入社した。  パートタイム従業員の緒方さんは、勤務時間が、透析に通う月・水・金曜日は15時まで、それ以外は17時までのフルタイムとなっている。新しい職場はパソコン解体現場と同じ建屋内だ。解体するのはUPS(電源装置)やパネル、プリンターなど幅広く、よりやりがいもあるという。  一方で、緒方さんは毎年のように入退院を余儀なくされており、「毎回1カ月ほどの入院になってしまうのですが、傷病手当の申請を助言してもらい、復職させてもらえるのは本当にありがたいです」とのことだ。  緒方さんが日ごろから何かと助けてもらっている同僚の1人、飯干(いいほし)良(りょう)さんにも話を聞いた。飯干さんは2025年に「障害者職業生活相談員資格認定講習」(※2)を受けたことで、「目線が変わった」という。  「じつは、緒方さんが来る前に在籍していた精神障がいのある従業員と、口論になったことがありました。当時は本人の行動が理解できなかったのですが、認定講習で障がい特性について知ってから、あのとき、もう少し寄り添えたんじゃないかなと思い返しました」  また以前は、何度も同じことを聞かれるなど不思議に思ったことも、いまでは特性を理解して対応できるようになったそうだ。 試行錯誤もしながら  アクトビーリサイクリングでは、現在の代表取締役社長以下5人が「障害者職業生活相談員」の認定講習を受け、水俣工場の現場には村元さんら3人が在籍する。  2019年に講習を受けた村元さんは「実際は同じ病状や特性の方でも、一人ひとり個性や性格が違いますから、接し方や対応も人それぞれですよね。実務経験が何年あっても、対応に悩むことは出てくると思います」として、「これまで障がいのある人を採用してきましたが、なかなか定着ができずに退職していかれた人も数人います」と率直に語ってくれた。  例えば特別支援学校から新卒で入ってきたある従業員は、注意欠如・多動症(ADHD)の診断を受けていたこともあり、職場では、集中力が続かないことが徐々に増えていったという。「いろいろなことに気を取られて作業が手につかないようで、立ちすくんでいる様子がよく見られました」(村元さん)  現場の指導だけではなかなか改善に向かわなかったことから、村元さんは、「障害者就業・生活支援センター」の支援担当者に相談。本人や母親も含めみんなで主治医の話を聞きに行ったところ、じつは本人が長期にわたり薬を服用していなかったことがわかった。その後も、なかなか仕事に来なくなったり、職場から突然いなくなってほかの従業員が探し回ったりしたこともあったという。しばらくして本人は、主治医の判断で自主退職することになり、現在は就労継続支援A型事業所に通っているそうだ。村元さんは「専門知識のある方が専属として常駐していれば、もっとうまく対応できたかもしれませんが、私たちのように、工場での本業の合間を縫って対応するのは、むずかしいこともあると実感しました」とふり返る。一方、そうした試行錯誤を重ねるなかで、職場では、特性を含めた障がいへの理解や対応の幅が広がってきているそうだ。 現場で欠かせない力仕事も  次に村元さんに案内してもらったのは、エアコン室外機内に入っていた板状の熱交換器だけが集められたエリアだ。可動式の棚に積載されていたのは、板を二つにカットして特殊な機械で油抜きした状態になったものだという。  これらを破砕工程の機械に入れやすいよう、大きな可動式のカゴに移し替えていたのが、家電リサイクル部門操業課の水本(みずもと)裕哉(ゆうや)さん(29歳)だ。手作業で手際よく1枚ずつ、カゴに重ねていき、一杯になったところで、カゴごと手押ししてすぐそばの屋外待機場に移動させていた。また、作業の合間には、ほうきとちり取りを手に、床に落ちた金属片などをはき集めていた。  村元さんによると「水本さんは体力もあり、いつも元気に一生懸命仕事に取り組んでもらっています」とのことだ。  水本さんは、福岡県内の特別支援学校を卒業後、食品加工会社で、野菜の袋詰め作業などの仕事を6年半続けていたそうだ。その後、父親の仕事の事情で、父親の実家がある水俣市に家族で引っ越すことになり、水本さんも退職。父親のつてを頼って、水俣市社会福祉事業団が運営する「障害者就業・生活支援センター」に相談し、アクトビーリサイクリングを紹介されたという。  2022年に入社した水本さんが最初に担当したのは、プラスチックの選別作業だった。しかし宇城市の熊本工場で本格的なプラスチック選別回収が行われることになったため、熱交換器の移し替え作業に配置換えとなったそうだ。「それまで移し替え作業は別の従業員が担当していましたが、若くて体力のある水本さんがやってくれるようになり、助かっています」と村元さん。  水本さんは、いまの仕事について「毎日、同じ作業で覚えやすくて、よかったです。けがをしないよう周りに気をつけています」と笑顔で話す。こちらから「熱交換器は重いでしょう」と問いかけると「いえ、重くないですよ」と即答してくれた。毎月のお給料で、好きな本などを買っているそうだが、お弁当代2万円を母親に渡しているほか、貯金もしているという。最後に「ずっと働き続けられるよう、がんばりたいです」と語ってくれた。 地域貢献への思い  2025年10月から本格操業した宇城市の熊本工場では、家電から出る廃プラスチックに加え、携帯電話といった小型家電などのリサイクル事業などを行っている。  ここでも水俣工場と同じように、「障害福祉サービス」事業所などに作業体験実習の場を提供しているそうだ。あらかじめ宇城市の協力を得て呼びかけたところ、説明会に周辺地域から16施設が参加。「このなかから、こちらで提示した作業を持続的に行える二つの就労継続支援B型事業所と、就労継続支援A型事業所の3事業所に絞らせてもらいました」(村元さん)。現在は利用者15人ほどが、小型家電の選別作業などを行っているそうだ。  「こうした作業体験実習の場は、私たちの地域ではそんなに多くはないと聞いています。施設の支援員さんからも、『もう少し増やせませんか』との相談がありますが、場所も手狭なところもあってなかなか期待に応えられていないのが残念です」という村元さんは、「個人的な思いとしても、今後も可能なかぎり、こうした就労支援の場を増やしていきたいですし、直接雇用にもつなげていきたいです」と話してくれた。  取材中、村元さんからは地域貢献という言葉が何度も出てきた。「障害福祉サービス」事業所との連携だけでなく、地域の清掃活動からお祭り、競り船大会といったイベントへの参加、さらには2024年に発足した女子サッカーチーム「水俣ユニオンフットボールウイメン」の所属メンバーを従業員として採用し職場ぐるみで応援している。社内ではフットサルクラブやソフトボールクラブなど、仕事以外で楽しめる活動にも力を入れており、こうした数々の実績から2018年に「熊本県ブライト企業」に認定された。「ブライト企業というのは、ご家族も含めて満足度が高いということで、求職者へのアピールにもなります」と教えてくれた村元さんの話からは、ほかの地方都市と同じように人口減少が続く水俣で、地域貢献をしながら少しでも多くの人たちと一緒に働き、ともに水俣を活性化していきたいとの思いも伝わってきた。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、アクトビーリサイクリング株式会社様のご意向により「障がい」としています ※1 「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)」については、厚生労働省ホームページをご覧ください。 https://www.mhlw.go.jp/stf/monisu.html ※2 「障害者職業生活相談員資格認定講習」については、JEEDホームページをご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer04/koshu.html 写真のキャプション アクトビーリサイクリング株式会社は、テレビやエアコンなどの家電リサイクルを手がけている 総務部門福祉リサイクル課課長の村元優介さん テレビの解体ライン。家電リサイクルは人の手で行われている 吊り下げ式のエアードライバー 基板や部品を入れるコンテナには、写真が貼られており、選別しやすい パソコン機器の解体・選別が行われている建屋 パソコンの解体工程では、就労継続支援B型事業所の利用者が活躍している 緒方さんは、モニターやプリンターなどパソコン機器の解体・選別を担当している 総務部門福祉リサイクル課の緒方栄二さん 緒方さんの同僚で「障害者職業生活相談員」の飯干良さん 家電リサイクル部門操業課の水本裕哉さん 破砕工程に向け、熱交換器を大型のカゴに移し替える水本さん 水本さんは作業の合間に、床に落ちた金属片をはき集めていた